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シャープの再生  立て直しの全体像示せ

 シャープが、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業からの買収提案を受け入れることを取締役会で決めた。鴻海が約66%の株式を握る親会社となり、シャープは巨大外資の傘下で経営再建を目指すことになる。
 液晶、太陽電池など革新的な製品で世界市場をけん引してきた日本の家電産業が苦境に陥り、急成長するアジア企業との協業で生き残りを図る新たな局面と言える。
 シャープは資金支援を得て開発を加速し、鴻海の生産・販売力と相乗効果を目指すが、競争が激しい世界市場で復活は容易でない。
 鴻海は契約を保留してシャープの財務リスクの最終確認を進めている。同時にどのように事業立て直しを進めるのか道筋を示すことが求められよう。
  シャープが支援先に鴻海を選んだ決め手は豊富な資金力だ。官民ファンドの産業革新機構の案を上回る総額6600億円規模の支援は、巨額赤字で新規投資が 滞った現状打開のためには魅力的で、主軸の中型液晶に加え、スマートフォン搭載が進む有機ELに重点投資する。主力銀行が追加負担のない鴻海案を支持した のも大きい。
 鴻海は電子機器の受託製造サービス最大手で、協業で生産コスト削減は期待できるものの事業再建の全体像は不透明だ。「脱下請け」へ 液晶などの技術力獲得が狙いとされ、各事業の一体再生や雇用維持も掲げる。だが、苦境を招いた現体制の延長線での再生は厳しいとの見方も多い。
 鴻海の郭台銘会長は、一部事業の切り離しや中高年のリストラに含みを残す発言もしている。業績が上向かずに人員削減や工場閉鎖に踏み切る可能性はないのか、具体的な再建計画を株主や従業員、地元関係者に説明すべきだろう。
 自動車と並ぶ日本製品の代名詞が家電産業だが、かつての隆盛は色あせている。シャープが「お家芸」の液晶への過剰投資でつまずいたように国内大手が高品質、多機能化に傾斜する一方、安価な部品を組み合わせた韓国や中国、台湾の企業の低価格品が世界シェアを奪っていった。
 こうした市場変化への対応の遅れが不振の背景にある。国は産業革新機構を通じ液晶、白物家電などの「日本連合」で業界再編を目指すが、寄せ集めでは競争力強化はおぼつかない。
 新興勢力の巨額投資で日本の技術優位も揺らいでいる。国内外の協業を含め、大学研究や幅広い中小企業の技術との多様な連携によって市場ニーズに応えるものづくりの再構築が求められる。

[京都新聞 2016年02月27日掲載]

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