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辺野古訴訟和解  国は強硬姿勢の反省を

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐる代執行訴訟で、国と沖縄県の和解が成立した。
 政府が辺野古の埋め立て工事を中止し、県との訴訟合戦を収束させて協議を仕切り直す内容だ。翁長雄志知事が「大変意義がある」と述べた通り、工事を止めたのは県側の成果だろう。
 そもそも辺野古移設に反対する県との協議に背を向け、一足飛びに法廷闘争に持ち込んだのは政府だ。それが地元の激しい抵抗を受け、工事中止という譲歩に追い込まれたとも言えよう。
 裁判前に時間軸を戻すのは当然だ。政府は強硬姿勢によって対立を深めた責任を反省し、誠実な対話によって解決の道を探らねばならない。
 代執行訴訟は、辺野古の埋め立て承認を取り消した翁長知事に対し、国が撤回を求めて昨年11月に提訴。対抗して県は、承認取り消しの効力を停止した国土交通相の決定をめぐって2件の裁判を起こし、法廷で全面対決する異例の事態が続いていた。
 福岡高裁那覇支部が示した和解案に難色を示してきた政府が一転、受け入れたのは、双方の対立が激化して移設計画が危うくなるのを避ける判断だろう。工事の手続きに司法の「お墨付き」を得る狙いだったが、県民の批判が高まり、夏の県議選、参院選への悪影響を恐れたとみられる。
 高裁からは、政府が知事決定の違法性を問う手続きなどを踏まず、最終手段の代執行で一気に司法決着を求めた姿勢に疑問が呈されていた。法廷闘争が続けば敗訴する可能性も指摘され、移設の足かせになるのも警戒したようだ。
 だが、安倍晋三首相は「辺野古移設が唯一の選択肢」との考えを変えていない。和解は、国が知事決定への是正指示から手続きをやり直すとし、訴訟に至った場合は「双方が判決に従う」としている。この言質を得ることで県側の抵抗を抑え込む狙いも透ける。
 再協議で政府がどう事態を打開するつもりなのかは見えてこない。昨夏に工事を中断して行った「集中協議」では、わずか5回の協議で政府方針を繰り返すばかりだった。単なる対話ポーズでは県民を失望させるだけだ。
 今回の和解から学ぶべきは、司法によって決着できる問題ではないということではないか。国の安全保障と県民の暮らし、人権がかかっている。政治の責任が問われている。

[京都新聞 2016年03月05日掲載]

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