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異次元緩和3年  物価目標に固執するな

 日銀が黒田東彦総裁の打ち出した「異次元」の大規模な金融緩和策を始めて丸3年が過ぎた。
 「2年程度で物価上昇率2%を達成する」と宣言したが、4年目に入っても実現は見通せない。
 黒田総裁は「やれることは何でもやる」と目標達成に強気の姿勢を続けるが、足元の物価は景気とともに停滞感を強め、デフレ脱却の効果と期待はしぼみつつある。
 世界的に景気減速への懸念とともに金融政策の限界論が広がっている。めっきの剥がれた緩和効果を追い求めるのでなく、膨らむ副作用のリスクを踏まえて柔軟な対応に見直すべき時機ではないか。
 異次元緩和は、空前の規模でお金を世の中に流すインフレ目標政策だ。「2年で2%」の目標達成を確約し、国民や企業に物価が先々上がると信じさせることで投資や消費の活発化を狙った。
 円安と株高が進み、企業収益や雇用の増加も見られた。物価も上昇に転じて一時は1・5%まで達したものの失速し、最近は0%近辺にとどまっている。日銀のシナリオとは異なり、物価上昇は円安による物資値上がりの要因が大きく、それに見合う賃上げが進まない中で家計の負担増となって消費が低迷しているためだ。
 中国経済の減速や原油安を背景に今年初めから円高、株安が進み、企業や消費者の心理を一層冷やしている。日銀は一昨年10月の追加緩和に続き、1月にマイナス金利政策の初導入で緩和手法を広げたが歯止めは掛かっていない。
 物価上昇の目標達成期も3度の修正で導入4年後の2017年度前半に先送りした。もはやインフレ期待を集めるのは困難だろう。「三本の矢」の中で金融政策以外にけん引役を見いだせないアベノミクスの手詰まりも示している。
 一方で副作用が目立っている。大量購入によって日銀の国債保有は全発行額の3割を超え、新規発行の大半を買っている。政府の借金の肩代わりと見なされれば信用を失い、暴落のリスクが高まる。
 さらにマイナス金利政策は、預金金利の低下とともに年金や保険などの資産運用を厳しくし、銀行の経営悪化も懸念されている。
 市場では景気下支えにさらなる緩和強化も取りざたされているが、政府・日銀が金融政策にかかる過大な負担をいかに減らしていけるかこそ課題だ。インフレ目標という手段に固執して自縄自縛に陥るのではなく、内需の底上げと新たに稼ぐ力を育てる総合的な政策対応が求められよう。

[京都新聞 2016年04月06日掲載]

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