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パリ協定署名  日本は早期発効先導を

 地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」の署名式が国連本部で開かれ、日本や米国、中国をはじめ計175カ国・地域が署名した。国際協定の署名初日の調印数では過去最多で、早期発効への弾みになることを期待したい。
 世界では巨大台風や洪水、干ばつなど温暖化が要因とされる異常気象が頻発し、人々を脅かしている。潘(バン)基文(キムン)国連事務総長が「我々は時間との競争にある」と訴えた通り、全世界が一刻も早く協定を具体的行動に移し、さらなる対策強化につなげねばならない。
 署名式には約60カ国の首脳が出席し、海面上昇に直面するツバルなど島国中心に15カ国が署名と同時に批准するなど、各国の強い危機感を示したと言えよう。
 パリ協定は、世界の温室効果ガス排出量を今世紀後半に実質的ゼロにすることを目指す。1997年採択の京都議定書が先進国だけに削減義務を課したのに対し、初めて途上国を含む全参加国が対策に取り組む歴史的な一歩だ。
 ただ削減内容は各国の自主目標を積み上げた形で、達成の義務化も見送られた。合算しても産業革命前からの気温上昇を、深刻な影響が出る2度より低く抑えるのが難しいことが分かっている。
 このため5年ごとに各国が目標を見直し、上積みを促す仕組みが導入された。各国の実施状況の報告と評価に透明性のある手法を確立し、排出削減を加速させる軌道に早く乗せる必要がある。
 出発点となる協定発効には55カ国以上の批准と排出量合計で全体の55%到達が必要だ。署名式では計38%を占める中国と米国が年内の批准を表明し、欧州連合(EU)も夏までの批准方針で早期発効への機運盛り上げを図った。
 一方、日本は具体性を欠き、存在感の薄さは否めない。2030年までに13年比26%削減する目標は欧米に比べ見劣りし、政府が近く決定する「地球温暖化対策計画」も達成への道筋は明確でない。
 大排出源の電力対策で排出量の多い石炭火力発電所の新設を認め、安全面の不安から反対世論が強い原発再稼働を前提とするなど問題点や不確実要素が多い。家庭やオフィスに40%削減を求め、産業界には自主計画の進展を国が検証するとしているが、実効性は疑問だ。
 世界が「脱炭素」へ動く中、日本も持続可能な社会への大胆な政策転換が要る。速やかな批准手続きと達成への確かな手だてを講じ、途上国への資金、技術支援でも先導的役割を果たしたい。

[京都新聞 2016年04月25日掲載]

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