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京丹後に新市長  「リセット」後の展望を

 京丹後市長選で、新人の三崎政直氏が初当選を果たした。「リセット京丹後」を掲げ、現職の中山泰氏との一騎打ちを制した。
 旧6町の合併以降、3期12年にわたって市政を担ってきた中山氏の政治手法を「国ばかり向き、市民不在で場当たり的」と批判、地域間の格差解消を訴えた。
 三崎氏の勝利は、旧町に関する現在の市政運営に市民の不満が根強いことを示している。両氏への支持をめぐって自民党支部の対応が旧町ごとに分かれるなど、選挙戦は地域対立の様相もみせた。
 合併時に掲げた均衡あるまちづくりの目標がいまだ実現できていない証左ともいえる。
 ただ、新市長となる三崎氏に、こうした対立をいつまでも引きずっている余裕はない。意見の違いを超え、衆知を集めて市政に反映していく柔軟さが必要だ。
 市をとりまく現状は厳しい。合併後、財政面の優遇措置が段階的に減らされる局面に入っている。
 人口減への対策も喫緊の課題だ。市人口は約5万5千人(2015年国勢調査速報値)と、5年間で6・68%減った。小中学生の数は30年余りで4割に落ち込んだ。
 中山氏は昨年策定した人口ビジョンで、60年の人口を7万5千人に増加させる目標を掲げた。
 三崎氏はこの試算に疑問を投げかけ、減少率を緩やかにしながら地域の持続性を高めると訴えてきた。だが、人口増への特効薬があるわけではない。公約に掲げた「活力ある田舎づくり」の実現などに全力を尽くす必要がある。
 自然景観を守り、エネルギー自給率を高め、空き家などを生かした起業を支援し、特産の農水産物に付加価値をつける-。地域資源の活用を重視する三崎氏のまちづくりの方向性が、低成長・人口減少時代に適応した新しい政策のモデルとなることを期待したい。
 しかし、地場産業が不振にあえぐ中、理念を実際の雇用や所得にどうつなげていくのか、市民が納得できる具体策を示さなくてはならない。公約に盛り込んだ事業や施設のスクラップ・アンド・ビルドは市民生活にも影響しよう。
 「リセット」した後の展望が描けなければ、市政刷新への期待はしぼんでしまいかねない。
 市内にはミサイル防衛用の「Xバンドレーダー」を備える米軍基地があり、騒音や米軍関係者による交通事故も起きている。問題解決へ着実に取り組んでほしい。市民の安全安心を確保することは、首長の最も基本的な使命である。

[京都新聞 2016年04月26日掲載]

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