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パナマ文書公開  税逃れ、多くの目で監視

 隠された税逃れの実態を白日の下にさらし、多くの目でチェックする。富める者と貧しい人々の格差が世界中で広がるなか、大きな意味をもつはずだ。
 租税回避地(タックスヘイブン)に設立された21万以上の法人と、関連する約36万の企業や個人の名前、住所のリストがインターネットに公開された。
 中米パナマの法律事務所から流出した「パナマ文書」である。公開した国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は「社会全体に公開されるべき法人情報を注意深く公表する」として、市民や専門家からの情報を期待する。
 パナマの事務所は、税率の低い租税回避地での法人設立を請け負っており、流出文書には英領バージン諸島や香港、米ネバダ州など21の租税回避地が出てくる。
 租税回避地にペーパーカンパニーをつくりお金を移せば、自国で税金を納めずに済む。秘密は守られ、形の上では合法とされる。
 しかし、合法だから問題ないと言えるだろうか。英国の市民組織・税公正ネットワークは、租税回避地に隠された資産を2千兆~3千兆円と推計しており、米国と日本の国内総生産(GDP)の合計を超える。
 本来、企業でも個人でも稼いだ所得は、自国に申告し納税しなければいけない。税金は公共事業や社会保険、福祉など社会基盤を形作るものだ。
 こうした国の土台を租税回避が揺るがしている。グローバル化の進行で人やマネーが国境を軽々と越え、多国籍企業や大資産家がマネーを租税回避地に移して富を増やす流れができているという。
 フランスのトマ・ピケティ氏ら世界の経済学者が、「格差の拡大を助長している」と租税回避地の根絶を求める書簡を発表した。事態の深刻さを示していよう。
 パナマ文書には日本人約230人、企業約20の名前が含まれる。これとは別に、租税回避地のケイマン諸島に日本企業が保有する投資残高は約65兆円に上るという。
 麻生太郎財務相がパナマ文書公開を受けて「問題のある取引が認められれば税務調査する」と述べるにとどめたのは物足りない。公開文書をチェックして実態を調べる、積極的な姿勢を見せてほしい。
 公開されたことで、世界中の税や法律の専門家やNGO、ジャーナリストたちが目を凝らし、足をつかって隠された事実を掘り起こすに違いない。とにかくマネーの行方を白日にさらすことだ。

[京都新聞 2016年05月11日掲載]

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