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消費増税再延期  約束守らぬ理由説明を

 来年4月に予定される消費税率の10%への引き上げについて、安倍晋三首相は2019年10月まで2年半再延期する意向を固め、政権幹部に伝えた。
 首相は増税延期を表明した14年11月、「再び延期することはない」と断言し、増税を確実に実施できる経済環境を整えると約束したはずだ。国民が納得できる理由がないかぎり、約束を破ることは許されない。
 伊勢志摩サミットで首相は世界経済の情勢を「リーマン・ショックの前に似ている」と指摘。閉幕に合わせた記者会見では「あらゆる政策を総動員してアベノミクスのエンジンをもう一度吹かしていく」と強調した。
 首相は増税について「リーマン・ショックや東日本大震災級の事態が発生しないかぎり再延期しない」と繰り返し発言してきた。サミットで世界経済の危機を訴えることで、再延期への地ならしを図るとともに、夏の参院選を控え看板政策のアベノミクスへの批判を回避する狙いが透けて見える。
 しかし、サミットに出席した首脳の一部や市場関係者からは、首相の経済に関する現状認識を「悲観的過ぎる」と疑問視する声が上がった。サミットでの議論を国内政治向けに利用したと言わざるを得ない。
 消費税増税が再延期されれば、影響は極めて大きい。
 社会保障関連では待機児童の解消に向けた保育の受け皿整備など子育て支援施策で財源が足りなくなるという。年金を受け取るために必要な保険料納付などの期間の短縮や、低所得者に対する介護保険料の軽減拡大も実現が見通せなくなる。子育てや介護、女性の社会参画の拡充など安倍政権が掲げる「1億総活躍社会」との整合性が問われよう。
 国債や借入金などの「国の借金」は15年度末で1049兆円に達している。不足する財源を赤字国債で捻出するとしても限界がある。首相は20年度に基礎的財政収支を黒字化する目標を堅持する方針というが、増税を再延期しても財政健全化を進められるのか、道筋を示す必要がある。
 延期幅を2年半とする理由も不透明だ。19年春の統一地方選や同年夏の次々回参院選への影響を懸念したのではないか。首相の自民党総裁任期は18年9月までで、それより先への延期は責任放棄ともいえる。首相は再延期の根拠を明確に説明し、今夏の参院選で有権者の審判を受けるべきだ。

[京都新聞 2016年05月30日掲載]

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