社説 京都新聞トップへ

自治体内弁護士  法を、住民により近く

 全国の自治体で常勤職員として活動する「自治体内弁護士」が増えている。3年前の2倍以上、123人にのぼることが日弁連の調査で分かった。
 自治体にとっては、お堅いイメージの弁護士が職員と机を並べることで、実務に役立つ法律アドバイスを身近に受けやすくなる。弁護士の少ない地方では特にメリットが大きいだろう。
 弁護士側も、行政や住民との関わりの中で経験と視野が広がり、公に貢献する手応えを感じられるという。
 法曹有資格者の就職難がいわれる中、若手を中心に活躍の場が広がり、地域の身近な存在になることは、司法制度改革の本来の趣旨に沿うものだ。
 自治体内弁護士は最長5年の任期付きで、全国13都県と74市区町村・一部事務組合で働いている。京滋での採用はないが、一般に書類と面接で選考され、役所の総務・法務部門のほか児童相談所、教育委員会、女性や障害者支援のセンターなどに配属されている。
 2013年以降、年20人前後のペースで増加してきた背景には、自治体のコンプライアンス(法令順守)や訴訟対応、住民への説明責任が一層重視されるようになったことがある。東北の被災地でもニーズが高まっている。
 未曽有の大震災からの復興事業で、各自治体は質・量ともにこれまでとは異なる法的課題に日々向き合っている。自治体職員と弁護士が連携し、被災者に寄り添った法制度の運用や改善につながれば、復興の確かな力となろう。
 とはいえ、任期付きである点がネックになり、求人に応じる弁護士は限られているのが現状だ。自治体の常勤職員になれば採用前の職場とは兼業できず、任期終了後にキャリアをどう生かせるかにも不安の声があるという。
 兼業が可能な非常勤の職員とするなど、それぞれの事情に応じた柔軟な対応があってもいいのではないか。自治体内弁護士を、任期の前後に受け入れて支援する法律事務所も増えつつある。こうした取り組みを広げたい。
 税金から給与が支払われるだけに、採用された弁護士は常に住民の目線を意識して仕事をすることが必要だ。日弁連によると給与額は年800万円前後が主流で、1千万円に達する例もあるという。
 現代社会では、行政と住民の利害が対立することが少なくない。自治体の仕事を公正に点検・評価してもらいたい。

[京都新聞 2016年06月28日掲載]

バックナンバー