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ダッカ武装テロ  残忍卑劣な凶行に憤る

 卑劣極まりない犯行に、憤りを表現する言葉が見つからない。
 バングラデシュの首都ダッカの飲食店が銃と刃物で武装したグループに襲撃され、日本人7人を含む20人が死亡した。犠牲者の大半は外国人とみられる。過激派組織「イスラム国」(IS)系のニュースサイトが犯行声明を伝えた。
 日本人犠牲者らは、交通渋滞の緩和を目指す国際協力機構(JICA)の円借款プロジェクトに携わっていた。志半ばで凶行に倒れた無念はいかばかりか。心から冥福をお祈りする。
 武装グループは「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫んで発砲したという。ISはイスラム教のラマダン(断食月)が始まった6月上旬に「多神教と背教者を一掃する」と聖戦を呼びかけており、共鳴する国内過激派が事件を引き起こしたとみられている。
 発生から10時間後に治安部隊が突入したとき、既に多くの人質が殺害されていた。罪なき民間人の命を身勝手な理由で奪う残虐性に驚きと怒りを禁じ得ない。
 国連が「最貧国」の一つに位置づけるバングラデシュだが、日本の政府開発援助(ODA)もあって急速に経済発展を遂げている。安い人件費も魅力とあって、繊維やインフラを中心に約240社の日本企業が進出し、両国間の貿易額は3千億円に達する。
 人口1億6千万人の9割はイスラム教徒だ。過激派対策に力を入れるハシナ首相は「ISやアルカイダは国内にいない」と強調していたが、油断はなかったか。経済発展の裏面で格差が拡大し、不満の蓄積を懸念する識者もいる。
 世界各地でイスラム過激派によるテロが相次いでいる。イスラム教徒が多いアジアの国々は狙われやすいとも言えよう。ビジネスや観光で渡航した日本人がいつ巻き込まれてもおかしくない状況だ。
 テロを防ぐ特効薬はないが、各国が結束し、過激派組織やメンバーの動向について迅速かつ緊密に情報交換することが重要だ。何らかの兆候がある場合、渡航情報で注意を喚起することもできよう。
 渡航者自身も身を守る意識を持ちたい。警戒が厳しい大使館や企業などより、深夜も不特定多数が出入りでき、外国人が多い飲食店などの「ソフトターゲット」が狙われる傾向がある。
 事件のさなか、菅義偉官房長官が参院選の応援演説で官邸を離れたことに野党から批判の声が出ている。政府の危機管理態勢は十分だったのか、今後検証が必要だ。

[京都新聞 2016年07月04日掲載]

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