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金融政策の総括  我田引水で反省見えず

 日銀は、これまでの大規模な金融緩和の枠組みを見直し、金融政策の目標を「量」から「金利」に軸足を移すことを決めた。
 現状のマイナス金利政策や国債などの買い入れによる大量の資金供給を維持しつつ、長期金利を0%程度とする新たな目標を導入する内容だ。黒田東彦総裁は「政策の柔軟性や持続性が高まる」とし、物価上昇率が「2%を超えるまで」緩和政策を続けると宣言した。
 だが、大規模緩和は黒田総裁が確約した「2年程度で2%達成」こそ核心だったはずだ。それが3年半たっても実現せず、達成期限も外すのなら、まず失敗を認めるべきではないか。注目された「総括的な検証」も緩和強化を前提にした我田引水の感が強く、枠組み修正で目先を変えても金融政策の手詰まりは隠せない。
 枠組みを修正したのは、従来目標としてきた年80兆円の国債買い入れ増の余地が狭まってきたからだ。今後は長期金利が0%で推移するよう柔軟に調整するとしたが、購入規模も据え置いたことで制約は変わらない。
 そもそも資金供給を増やし続けても物価上昇が2%に迫るどころか、直近の消費者物価指数は5カ月連続でマイナスだ。総括的検証では、原油価格の低下や消費増税など外部要因のせいにしたが、これまでの円安で企業収益は上がっても投資や賃上げに回っていない実態から目を背けてはならない。
 一方、マイナス金利政策の検証では、金融機関の収益減や保険、年金の運用悪化などを副作用に挙げたが、企業向けや住宅ローンなどの金利を押し下げる有効性の方が上回ると結論づけた。長期金利の目標設定は、金融機関や資産運用面から反発が強い金利のマイナス化を避ける狙いもあろう。
 日銀は今後、マイナス金利の拡大を追加緩和策の柱に据える考えを示す。だが、肝心の資金需要が伸びないなかでは物価上昇は見通せず、さらなる副作用や消費者心理の悪化を招きかねない。
 黒田総裁は今回、事前に検証ポイントを提示するなど市場との対話に配慮する姿勢を示した。相次ぐ「サプライズ」手法が市場の疑心暗鬼を招いていることを踏まえたのだろうが、従来路線を追認するための「検証」では説明責任を果たしたとは言えない。
 金融政策だけで経済を押し上げるのには限界があるのは当然だ。財政政策や構造改革を含めたアベノミクス全体の抜本的な検証と軌道修正が求められよう。

[京都新聞 2016年09月22日掲載]

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