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パリ協定発効へ  日本も批准急ぐべきだ

 京都議定書の後継となる地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」が11月上旬に発効することが確実になった。
 欧州連合(EU)が10月初めの批准を決め、必要な条件が満たされる。「脱炭素社会」を目指す歴史的合意とされる協定が動き出す。日本も批准を急がねばならない。
 パリ協定は昨年12月、196の国と地域が採択。55カ国以上が批准し、温室効果ガスの排出量合計が世界全体の55%を超えれば30日以内に発効させると定めた。
 各国の国内手続きは予想以上のペースで進み、9月下旬の時点で排出量世界1位の中国と2位の米国を含む61カ国が批准。排出量も米中合わせて約38%になることから計47・79%まで達した。
 さらに、インド(4・1%)も批准を表明。これでドイツ(2・56%)、フランス(1・34%)を含むEUか、日本(3・8%)が批准すれば、排出量の条件も満たすことは確実になっていた。
 EUでは、加盟28カ国が国内手続きを済ませた上で、欧州議会が承認するため時間がかかるが、地球温暖化対策を主導してきた立場が揺らぐことを懸念し、加盟国手続きを待たずにEUとして先に批准する特別措置を決めた。
 EUをはじめ各国が批准を急ぐのは、11月にモロッコで開かれる国連気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)にある。それまでにパリ協定が発効すれば、第1回締約国会議として位置づけられ、批准国が強い発言権を持つ国際交渉の場になるからだ。
 会議では、温室効果ガスの排出量を互いに検証する仕組みや、発展途上国への技術や資金を支援する枠組みに関する実施ルールが議論される見通しだ。批准していない国はオブザーバーにとどまり、ルールづくりに参加できない。
 日本は出遅れの感が否めない。安倍晋三首相は臨時国会の所信表明演説でパリ協定に触れず、発効が確実になってようやく批准案の国会提出と早期締結の意欲を示したが、審議日程は見通せない。
 産業革命以降の世界の平均気温の上昇幅を2度未満にして、さらに1・5度を目指すと明記した協定は、5年ごとに各国が目標を見直す仕組みで、実効性を高めるために実施ルールづくりは重要だ。
 日本は世界第5位の大排出国にも関わらず、削減目標は欧米に見劣りし、国際的な役割を果たしているとはいえない。臨時国会では環太平洋連携協定(TPP)よりパリ協定を優先すべきだ。

[京都新聞 2016年10月03日掲載]

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