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象牙取引の禁止  「日本は例外」通用せぬ

 野生生物の保護に関するワシントン条約締約国会議は、アフリカゾウの絶滅を防ぐため、象牙の国内市場を閉鎖するよう各国に求める決議を採択した。
 国際取引を規制するワシントン条約で、国内市場への措置も求めるのは異例だ。密猟によるアフリカゾウ急減への危機感の表れだが、日本などの抵抗で決議は例外を盛り込んだ「玉虫色」となった。
 日本は、国内取引を適切に管理しているとして「閉鎖の対象外」と主張するが、環境保護団体などから「抜け穴が多い」と批判されている。大消費国として責任は免れず、厳格な履行が求められる。
 米国や多くのアフリカ諸国が市場閉鎖を求める中、日本や輸出再開を望む南アフリカ、ナミビアが一律の禁止に反対して対立した。決議は、決裂を避けるため閉鎖対象を「密猟や違法取引の原因となる市場」と限定する表現を加えた妥協の産物だ。強制力はないが、各国に実施状況の報告を求めることで国際的な監視が強化される。
 その背景には、中国などの経済発展で象牙需要が高まり、密猟が深刻化している状況がある。国際自然保護連合の報告書では、昨年の調査でアフリカゾウの生息数は推計41万5千頭と2006年から11万頭余り減った。象牙を取るための密猟が年2万~3万頭に上ると言われ、犯罪集団やテロ組織の資金源ともみられている。
 日本で象牙は印鑑や装飾品に利用されている。国や業界では全面禁止の決議は免れたと安堵(あんど)の声も聞かれるが、世界からの厳しい視線を自覚すべきだろう。
 国内では国際取引禁止の前に合法的に輸入された象牙なら、国への登録を条件に販売が認められている。だが登録が必要なのは完全な形の象牙で、加工品は対象外だ。違法品も分割・加工されれば合法品と見分けがつかず、紛れて流通していると指摘されている。
 環境保護団体が昨年、日本の37業者に「登録票のない象牙を売りたい」と持ちかけた覆面調査では、11業者が購入意向を示し、虚偽の登録法を指南した業者もあった。中国で日本からの密輸品も摘発されており、「日本は密売・密猟の温床」との批判を否定しえない。
 最大消費国の中国や米国は昨年9月、国内取引を停止する意向を表明し、フランスなども続いている。日本は再び世界一の消費国になる見通しだが、都合の良い解釈で孤立を深めるのでなく、密猟根絶への責任を果たすよう抜本的な対策が必要だ。

[京都新聞 2016年10月05日掲載]

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