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受動喫煙防止  東京五輪へ国際水準に

 2020年東京五輪・パラリンピックに向け、厚生労働省は受動喫煙防止策として病院や学校は敷地内全面禁煙とする罰則を伴う規制強化案を公表した。
 国際オリンピック委員会(IOC)が掲げる「たばこのない五輪」に対応してきた五輪開催国に比べれば緩やかな規制とはいえ、これを機にたばこの健康被害根絶を目指す世界の潮流に近づけたい。
 IOCは五輪の禁煙方針を打ち出し、競技会場内外の禁煙、完全分煙化を推進してきた。04年のアテネ以降、今夏のリオデジャネイロまで夏季、冬季の開催7都市はいずれも法律や条例で主な施設の屋内禁煙を義務付けた。喫煙者にとってはつらいかもしれないが、受動喫煙防止は開催地の責務と言える。
 だが日本は健康増進法で多くの人が集まる公共の場での受動喫煙防止策を求めているものの、努力義務にすぎない。規制強化による顧客離れを警戒して飲食、サービス業者らの反発が強いためだ。
 たばこの煙にはニコチンなどの有害化学物質が含まれ、肺がんや心筋梗塞を引き起こす要因となる。煙害は周囲の人にも及び、子どもの呼吸機能の発達に悪影響を与えるとの報告もある。
 世界保健機関(WHO)によると、公共の場を全面禁煙とする法律を施行している国は14年末で49カ国に上る。日本の防止策が最低ランクとされるのは情けない。
 厚労省案では、病院などの全面禁煙のほか、運動施設や官公庁、大学の建物内も全面禁煙とする。飲食店やホテル、駅、空港などの建物内も原則禁煙となるが、喫煙室の設置を認めるという。
 厚労省の専門家会合が15年ぶりに改定した「たばこ白書」は分煙ではなく「屋内の100%禁煙化を目指すべき」と提言している。喫煙室を設けても煙の漏れを防げないためだ。ところが同省案は原則禁煙とする飲食店などで分煙を容認する方針であり、屋内禁煙を義務付けてきた他の五輪開催国より規制が甘いのは否めない。
 厚労省は健康増進法改正など法整備を急ぎ、施設の管理者だけでなく喫煙者本人にも罰則を適用して実効性を高めたいとの意向だ。強制力のある受動喫煙対策は時代の要請と言えよう。
 たばこはわが身だけでなく、周囲の人たちの健康をもむしばむことに思いを巡らせてほしい。東京五輪を見据えた規制強化の動きを、「脱たばこ」へ国民的議論を深める契機としたい。

[京都新聞 2016年10月14日掲載]

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