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総裁任期延長  異論出ぬ自民の危うさ

 自民党が、連続「2期6年まで」と制限している総裁任期を「3期9年まで」に延長することを決めた。来年3月の党大会で党則改正を正式に決定する。
 2018年9月に総裁の任期満了を迎える安倍晋三首相の政権延長に道筋がついた格好だ。任期は最長で21年9月までとなり、20年の東京五輪・パラリンピックを現職首相として迎えることも可能だ。
 議論を始めてから、約1カ月でのスピード決着である。「安倍1強」体制の党内状況を反映したものと言えようが、さらにそれが強まることが懸念される。
 共同通信社の8月の世論調査では、安倍内閣の支持率は52・9%と高かったものの、総裁任期延長は「しない方がいい」が52・5%と過半数を占め、国民の間には安倍政権の長期化に警戒感も浮き彫りになった。単なる党則変更にはとどまらない。国民の声に謙虚に耳を傾ける必要がある。
 自民は1955年の結党以来、総裁任期の規定を何度も変えてきた。総裁は首相の座に直結するため、実力者らや派閥の間でさまざまな思惑があったからだ。80年には「多選を禁止すべきだ」として連続3選禁止が設けられた。政権の「独断専行」による弊害を防ぐ手段として妥当な規定だろう。トップの長期化は、後継者の養成にも支障をきたす。
 ところが今回、任期延長について党内からほとんど異論が出ず、「3期9年」と「多選制限撤廃」の2案で議論が進められた。「ポスト安倍」をうかがう岸田文雄外相や石破茂元幹事長も、高村正彦副総裁ら党執行部の説得で沈黙した。良くも悪くも、さまざまな意見が噴出した自民がすっかり変質してしまった感が強い。
 先進7カ国の主要政党では党首の任期が制限されていないなどの説明はなされたが、来年1月の衆院解散が取りざたされる中、議員には公認権を握る執行部との対立を避けたい心理も働いただろう。とても国民を納得させるだけの議論を尽くしたとは言えまい。
 安倍首相が総裁3期目を全うすることになれば、戦後最長の政権となる可能性がある。在任中の実現に意欲を見せる憲法改正にも時間的な余裕ができる。一方、自らが先送りした消費税率の再引き上げや経済政策、人口減少に伴う長期課題への責任も重くなる。
 長期政権には政治を安定させ、国際的な発言力を確保する利点はあるが、弊害も大きいことを厳しく自覚しなければならない。

[京都新聞 2016年10月28日掲載]

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