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パリ協定発効  地球の歴史の転換点に

 地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」が4日に発効する。73カ国と欧州連合(EU)が批准し、昨年12月の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択されてから、10カ月という短期間で発効要件を満たした。
 海面上昇や異常気象の増加など地球規模で迫り来る温暖化の影響を、国際協力で最小限にとどめる試みだ。全ての国が自主的な削減目標を掲げ、温室効果ガスの排出を今世紀後半に実質的にゼロにすることを目指す歴史的な取り組みがいよいよ動きだす。再生可能エネルギーの拡大などで「脱炭素社会」への転換点としたい。
 京都議定書が採択から発効まで7年もかかったのに比べると、パリ協定は格段に早い。排出量世界1位の中国と2位の米国がいち早く批准して流れをつくった。
 排出量の多いインドも10月に批准、ドイツやフランスを含むEUは、加盟国の手続きを待たずにEUとして先に批准することを決めたことから、世界の温室効果ガス排出量の55%以上を占める55カ国以上が批准するという要件を予想外のスピードでクリアした。
 地球温暖化の影響は、自然災害の増加や深刻な大気汚染などに現れ、小さな島国は国土が海に沈む事態に直面する。各国の危機感は強い。パリ協定は先進国と発展途上国がともに参加し、産業革命前からの気温上昇幅を2度未満に抑え、できれば1・5度未満にすることを目指す。ただ、現時点で各国が掲げる削減目標を足しても、目標は達成できない。途上国に資金や技術を支援し、削減目標をさらに引き上げる必要がある。
 協定に実効性を持たせるルールづくりも重要だ。7日からモロッコ・マラケシュで始まる同条約第22回締約国会議(COP22)に合わせ、パリ協定の第1回締約国会議(CMA1)が開かれて議論が本格化する。2018年ごろに「ルールブック」が採択予定だ。
 日本は批准が遅れて発効に貢献できず、ルールづくりにも参加できない見通しだ。世界第5位の排出国の責任を果たしたとは言えまい。
 しかも日本の削減目標は不十分で、石炭火力発電所の新増設など世界の動きにも逆行する。今後、大幅に見直す必要がある。
 「脱炭素社会」は生活や産業を大きく変えるだろう。すでに、化石燃料を扱う企業への投資が敬遠される一方、環境問題に取り組む企業への投資規模は拡大している。地球の未来のため、各国が責任ある行動を起こしたい。

[京都新聞 2016年11月04日掲載]

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