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地域金融の行方  金融庁方針に危うさも

 金融庁が今後の重点施策をまとめた「金融行政方針」を公表した。不良債権処理を優先してきた従来の姿勢を変え、地域経済の活性化を重視する方針を示した。
 地銀や信用金庫など地域の金融機関に、中小企業への融資の拡大を促し、情報開示などによる「顧客本位」を強く求める内容だ。前身の金融監督庁から続く厳格な資産査定や法令順守を重んじる立場を、大きく転換したと言ってもいい。
 背景には、地銀などが、リスクを避けて手堅い優良企業ばかりを相手にしていたり、販売手数料が高い投資信託や保険などの商品販売に傾注し、利ざやによる営業ノルマの達成に追われている-といった厳しい批判がある。
 確かに、そうした問題を抱えている面はあろう。同庁は方針の中で、将来性のある中小企業への融資が進まない状況を「日本型金融排除」と呼んでいるが、担保や信用保証制度への過度な依存は見直していく必要がある。また米国などと比べても、金融商品の手数料の高さは目につく。手数料の開示や商品リスクの十分な説明など、顧客に向けた情報の透明化は積極的に進めねばならない。
 一方で、危うさも禁じ得ない。今回の金融庁方針は、日銀が今年2月に導入した「マイナス金利」とともに、金融機関に「もっとお金を貸せ」と事実上圧力をかける点で軸を同じくする。行き詰まるアベノミクスの打開に金融政策を利用し、企業の設備投資を促して経済成長を追う-。そんな思惑が先立っているのではないか。
 京都や滋賀の地域金融機関からも不安や疑問の声が聞かれる。「企業が設備投資に慎重なのはお金がないからではなく、経済情勢が不安定、不透明だからだ。もし融資や投資が失敗したら、金融庁が責任を取れるのか」「成長を優先する企業ばかりではない。特に京都の企業は持続性を大切にしており、無理な借金は嫌う傾向がある。地域性を抜きに、金融庁が一律に尻をたたくのはどうか」
 融資に回すのは、地域の利用者の大切な預金である。バブル経済の頃の過剰融資のような失敗は許されない。金融庁は地域の金融機関と十分な対話を重ね、実情に合った柔軟な対応を取るべきだ。新しい時代の地域金融のあり方については、広範な議論を求めたい。
 一方、金融機関側も自助努力が要る。将来性の評価など「目利き」ができるスタッフを育み、顧客と真摯(しんし)に向き合って地域経済を支える責務を果たしてほしい。

[京都新聞 2016年11月09日掲載]

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