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参院1票の格差  抜本改革を進めてこそ

 「1票の格差」が最大3・08倍で実施された7月の参院選は法の下の平等を定めた憲法に反するとして、弁護士グループが選挙無効を訴えた全国訴訟の判決が出そろった。
 14の高裁・高裁支部に起こされた計16件の訴訟のうち、「違憲状態」が10件、「合憲」は6件である。最高裁の統一判断が今後示されるが、違憲状態の判断が多数を占めた重みを国会は真摯(しんし)に受け止め、選挙制度の抜本改革を迅速に進めなければならない。
 最高裁は2010年と13年の2回の参院選に関し、いずれも5倍前後の格差を「著しい不平等状態」として違憲状態と判断、選挙区を都道府県単位としていた従来の制度の見直しを求めた。
 これを受け与野党は「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区と選挙区定数を10増10減する公選法改正を行い、議員1人当たりの有権者数の最大格差は13年の4・77倍から縮小した。それでも残る3倍超の格差をどう評価するかが今回の訴訟の焦点となった。
 違憲状態とした広島高裁岡山支部などは、合区による縮小の努力を一定評価しつつも、最高裁判決が意味する「著しい不平等状態」の解消には不十分とした。合憲判断をした高松高裁なども合区については緊急避難とし、さらなる是正を求めた点は重要だ。
 都道府県は長い歴史を持つ地域的なまとまりがあり、合区を巡っては対象地域から「地方の声が届かなくなる」といった声が出ている。
 そうした声を受け、憲法改正で参院議員を都道府県の代表と位置づけ、強引に格差を容認しようとする動きが自民党内などにあるが、それでは投票価値の平等を重んじる最高裁の判断を無視することになり、賛同し難い。
 参院ではこれまで都道府県別の選挙区を廃止し、全国をいくつかの地域ブロックに分けて選挙を行う案が検討された経緯がある。結局、自民主導で2カ所の合区にとどまったが、根本的な改革を進めない限り問題の解決は困難だ。
 参院の選挙制度改革は、本来、衆院とセットで考え、役割や権限の違いを明確にして議論すべき問題だ。「衆院のカーボンコピー」とやゆされるような存在ではなく独立性の高い「良識の府」を目指すなら、地域代表という発想からいったん離れて考えてみることも必要だろう。衆院とともに国民一人一人の声を等しく国政に反映させる真剣な改革を望みたい。

[京都新聞 2016年11月09日掲載]

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