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大学入試改革  記述式の課題なお多く

 大学入試センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト」の国語の記述式問題の実施方法案を、文部科学省が公表した。
 今の中学2年生から対象になる予定の新テストは、国語と数学でマークシート式に加えて記述式を導入する点が目玉だ。知識偏重から思考力重視の教育への転換が改革の目的であり、それ自体は時代の要請に沿うものだろう。
 ただ実施方法を巡る議論は幾度も壁にぶつかり、今回の案も課題解決へ一歩前進とは言い難い。来年度初めまでに方針決定するスケジュールを文科省が変えない中、学校現場や家庭、社会の納得のいく結論を導き出せるか心配だ。
 案では、2種類の記述式問題を想定している。解答文字数が80字以上の高難度の問題と、40~80字の中難度の問題だ。受験生は、志望大学の指定するどちらか一方、または両方を解答する。
 2種類にしたのは、採点する大学側の負担を軽くして新テストを利用しやすくするためだ。国語の記述式の採点は大学入試センターではなく受験生の出願先の大学に割り振る案が検討されたが、志願者の多い私立大や一部の国立大に異論が強く、解答文字数を減らしてセンターが採点する問題(中難度)と、各大学が採点する問題(高難度)に分けた。
 だが40~80字の短い解答で、思考力や表現力が十分測れるかは疑問だ。受験生にとっては方式が複雑になり、戸惑う人もあろう。
 センター分の採点作業は民間業者に委託するが、短文とはいえ50万人規模の受験生の多様な解答をどう公平に、かつ効率的に処理するかという課題は残ったままだ。各大学の採点基準をばらつかせない工夫も要る。大学が個別に行う2次試験とのすみ分けの検討も、置き去りにしてはなるまい。
 これまでの学力観を大きく変える改革である。ハードルの多さも含めて社会全体で認識を共有し、よりよい手法を探りたい。文科省は昨年12月に新テストの出題イメージを公表したが、さらに例示を増やすなどして議論を喚起することも必要だろう。
 高校現場からも積極的に意見を出してほしい。気になるのは、先日公表された全国普通科高等学校長会のアンケート結果だ。新テストへの移行で、今まで以上に家庭の経済力が進学結果に影響を及ぼすと考える校長が94%に上った。塾や予備校通いに拍車がかかり、格差を助長する恐れがあることも見逃してはならない。

[京都新聞 2016年11月16日掲載]

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