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年金制度改革  持続可能にするために

 臨時国会に提出された年金を巡る二つの重要法案のうち、一つが成立した。
 年金の受け取りに必要な加入期間(受給資格期間)を25年から10年に短縮し、無年金者を減らす改正年金機能強化法だ。来年10月から約64万人が新たに年金を受けられる見通しだ。
 受給資格期間の短縮は、もともと「社会保障と税の一体改革」の充実策の一つで、消費税率を10%に引き上げ、恒久財源を確保して実施するはずだった。だが安倍政権は2019年10月まで増税を延期し、見切り発車となった形だ。生活保護を受けている無年金の高齢者世帯数は過去最高になり、先送りできない課題だ。先行実施はやむをえない。
 とはいえ実施に必要な年間約650億円の財源は、18年度以降めどがたっていない上、納付期間を短縮しても年金を受けられない高齢者がまだ約26万人いる。対策は道半ばだ。
 もう一つ、支給額を抑制する年金制度改革法案は、審議が本格化し始めたばかりだ。
 現行では、高齢者に配慮し、現役世代の賃金が下がっても物価が上がれば支給額を据え置き、デフレ下で賃金が物価より下落した場合は物価に合わせる。法案の新ルールでは、いずれの場合も賃金に合わせて改定され、減額幅が大きくなることから野党は「年金カット法案だ」と強く批判している。
 公的年金は現役世代が負担する保険料と国費で賄われ、限られた財源を長期間、世代間で分け合う仕組みだ。現状のままだと今の高齢者への支給水準が高止まりし、その分若い人の老後の受給水準が低く抑えられる。
 新ルールを用いた国の試算では、今の高齢者の支給水準は3%減る一方、現役世代が将来受け取る年金は想定より7%増え、世代間の公平性が確保できるという。
 ただこの数字は過去10年の実績に新ルールを当てはめ、将来も賃金が伸び続けるのが前提だ。民進党は「国民に誤解を与える」と再試算を要求している。低年金の人まで給付が抑えられるなど高齢者への影響は大きいだけに、政府には対策を含め丁寧な説明を求めたい。
 法案は現役世代の減少などに応じて給付を抑える「マクロ経済スライド」の強化策も明記し、政府は二つの抑制策で制度の持続可能性が高まるとする。だが少子高齢化が進み、納付率も下がる中、今の世代間の仕送り方式で安定した年金制度を維持していけるのか。さらに踏み込んだ議論が必要だ。

[京都新聞 2016年11月22日掲載]

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