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朴大統領の辞意  不信と混乱の責任重い

 韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は国民向け談話で「進退問題を国会の決定に委ねる」と述べ、2018年2月の任期満了前の辞任を表明した。親友の崔順実(チェスンシル)被告の国政介入疑惑で国民の激しい反発を浴び、窮地に追い込まれての決断だ。深い政治不信と混乱を招いた責任は重い。
 朴氏は就任以来「非正常の正常化」をスローガンに掲げ、政治の浄化と安定を第一に訴えてきた。その本人が国民から糾弾の対象になるとは、皮肉というほかない。
 談話では、安定的に政権を移譲できるよう与野党が方策を講じれば、その日程や手続きに沿って退任するとした。政治空白を長引かせないよう、与野党は次期大統領選への環境整備を急ぐべきだ。
 朴氏は崔被告に機密資料を提供して国政に不正介入させたほか、財界に崔被告の財団へ出資させた疑いがある。朴氏は検察が求める参考人聴取には応じていない。
 談話では「国のための公的事業と信じて推進した。いかなる個人的利益も受けていない」と訴えたが、国民に響いたとは思えない。野党からは「時間稼ぎ」「弾劾逃れ」と疑念や批判の声が上がる。
 支持率は過去最低の4%に落ち込み、首都ソウルや地方都市で大規模な退陣要求デモが広がっている。野党の大統領弾劾案に同調する声が与党内からも上がり、朴氏は四面楚歌(そか)となっていた。
 年内に日本で開催予定の日中韓首脳会談は先送りするしかあるまい。東アジアの安定に向け、意思疎通を図る機会を失うのは痛い。
 日本にとっては朴政権と積み上げた成果の行方が心配だ。従軍慰安婦問題の「最終かつ不可逆的な決着」を図る日韓合意に基づき、10億円を拠出したが、韓国内では「合意は屈辱的」との声もある。ソウル日本大使館前の少女像撤去を働きかけ続けたい。
 在韓米軍に配備される高高度防衛ミサイル(THAAD)や、先ごろ締結された日韓軍事情報包括保護協定にも批判が強い。過渡的な政治状況にあって、韓国側の急な態度変更には注意が必要だろう。
 年明け以降になる次期大統領選では最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)前代表、潘基文(パンギムン)・国連事務総長のほか、「韓国版トランプ」と呼ばれる李在明(イジェミョン)城南市長が浮上している。財閥解体や金正恩・朝鮮労働党委員長との南北無条件会談、朴氏の収監など過激な主張で知られ、対日姿勢も厳しいとされる。
 一衣帯水の隣国である韓国の動向は日本への影響が大きい。情報収集を徹底し、目を凝らしたい。

[京都新聞 2016年11月30日掲載]

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