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DeNA謝罪  メディアの自覚を欠く

 IT大手のディー・エヌ・エー(DeNA)がインターネット情報をまとめて閲覧できる全ての10サイトを相次いで休止した問題で守安功社長は会見で「成長を追い求めて正しい情報への配慮を欠いた」と謝罪した。
 休止したのは、「キュレーションサイト」と呼ばれるもので、健康や医療など生活全般に関する情報をまとめて閲覧できる。項目をテーマ別に掲げ、利用者は生活上の疑問や関心について手軽に検索して情報を入手している。
 問題が表面化したのは、DeNAが運営する健康情報サイト「WELQ(ウェルク)」に掲載した医療情報に関する医療記事に根拠のない誤った情報が多く含まれるとの指摘が相次いだためだ。記事の無断転用もあり、サプリメントの効能を示す記事に医学的な根拠がないと指摘された。
 多くの大手ITも同様のサイトを展開しており、一部では公開をやめた社もある。報道や編集の実務経験者を採用し、適正な原稿作成やサイト運営に当たるなどの試みが続くなかで、今回の不適切な行為が表面化した責任は大きい。
 こうした事業はネット画面に表示された広告料を収入源にしている。読者を多く獲得しようと安易に記事を仕立てる編集姿勢は問われなければならない。
 DeNAはゲーム事業から業務を拡大した。近年はスマートフォン向けゲームの台頭で競争が激化し、子会社がプロ野球球団を運営するほか、遺伝子検査など新規事業にも進出した。情報サイト事業も経営多角化の一環として行い、11月の決算会見では「売り上げは想定を超えており、力強い事業に育っている」と自負していた。
 サイトの記事は、一般の情報提供をまとめる形式だとうたっていたが、実際には最大で9割程度は外部のライターに執筆させていたという。他のメディアに掲載された文章の転用を推奨するようなマニュアルや指示を出していたことも判明した。原稿の点検を怠っていたことを認め、著作権を侵害した可能性もある。
 インターネットの利点は、みんなの知識や見解を発信し合い、自由に交流できることにある。今回の事態は、こうしたネットの有用性を土台から壊してしまう。
 情報を扱うメディアとしての自覚を欠く行為というしかない。「情報を信じるのは読者の責任、という無責任体質で情報を垂れ流していた」とするメディア研究者の指摘は当然だ。

[京都新聞 2016年12月09日掲載]

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