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出生100万人割れ  対策惜しまず継続的に

 今年生まれた赤ちゃんの数が、統計を始めた1899年以降初めて年間100万人を割り込み、過去最少の98万人台にとどまるとの見通しを厚生労働省が発表した。
 第2次ベビーブーム世代の出産がほぼ終わり、次の世代は人口が少ない。晩婚傾向と相まって、少子化に歯止めはかかりそうにない。
 女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率は、昨年で1・45。安倍政権が掲げる「希望出生率1・8」の目標をどう実現するかが問われるが、目玉と位置づける子育て・教育支援策は小粒で、新年度予算案をみても当事者の切実な願いに応えられるとは思えない。
 仕事と子育ての両立支援へ、保育所などの受け皿を増やし、職員確保のために保育士の処遇を改善する。教育費負担の困難な家庭が子どもの進学を諦めずに済むよう、返済不要の給付型奨学金制度を創設する。これらは今夏の参院選で与党が強調した公約だ。
 だが、保育士の賃上げは私立認可施設でわずか2%、月約6千円だ。経験7年以上の中堅保育士への上乗せも月4万円にとどまる。そもそも保育士の給与は全産業平均より11万円も低い。この程度の賃上げで、離職した多くの保育士を職場に呼び戻せるだろうか。
 給付型奨学金は、住民税非課税世帯を対象に月2万~4万円を支給する。仮に、今ある貸与型の無利子奨学金を月5万円受ける大学生が、3万円分を給付型にできれば将来の返済額を半分以下に減らせる。卒業後の生活設計がしやすくなり、結婚、出産の希望がかなうとの期待が若い世代にはある。
 それだけに、支給対象や金額の枠をもっと広げるべきだ。政府は1学年あたり2万人を見込むが、非課税世帯の進学者は6万人いる。必要な年間授業料(国公立大54万円、私立大平均86万円)、入学金、下宿代などの負担に照らして、支給額の低さは明らかだ。
 出生率アップに向け、政府にはやや強引ともみえる動きもある。内閣府の検討会が先日、企業による従業員の結婚支援のあり方について提言をまとめたが、会議では既婚の上司が独身社員に助言する「婚活メンター」導入といった案まで検討された。最終的に削除されたものの、こうした手法はセクハラや特定の価値観の押し付けにつながりかねず、配慮を欠くものだ。
 少子化に特効薬はない。できるのは、若い世代が希望を持てる社会へ予算を惜しまぬことだ。地道に対策を継続することも重要だ。

[京都新聞 2016年12月24日掲載]

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