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シリア停戦合意  今度こそ和平の実現を

 シリア停戦合意 アサド政権、反体制派武装勢力、「イスラム国」(IS)、クルド人勢力という「四つ巴(どもえ)」の内戦に終止符を打つ一里塚にしたい。
 ロシアとトルコの仲介で、シリアのアサド政権と「自由シリア軍」など反体制派武装勢力の停戦合意が成立した。今月下旬にはカザフスタンで和平協議が開始される。
 数々の悲劇を生み、300万人もの難民の国外流出を招いた戦火が収まるのなら、合意成立を歓迎する。昨年12月に激戦となった北部の要衝アレッポでみられたような非人道的行為の横行をまず止めねばならない。
 米国とロシアが主導した停戦は何度も試みられたが長続きしなかった。まずは合意を両勢力が順守し、和平にこぎつけることが重要だ。そのうえで、ISなど原理主義的な過激派組織を壊滅させて治安を回復し、民生向上を図るしかシリア復興の道はない。
 しかし状況は予断を許さない。政権側が合意に違反して水源を攻撃したとして、自由シリア軍は和平交渉に向けた協議を凍結すると発表し、停戦破棄にも言及している。後ろ盾となっているロシアとトルコが双方としっかり連絡を取り、停戦を担保する必要がある。
 反体制派を支援するトルコがアサド政権を支えるロシアとの協調に踏み切った背景には、難民が大きな負担になっているうえ、分離独立を掲げるトルコ国内のクルド人と結びついたシリア領内のクルド人組織をたたく意図があろう。
 また、昨年7月のクーデター未遂事件でトルコ政府が黒幕とする人物の引き渡しに米国が応じないことも、トルコがロシアに接近する一因となった。任期切れ間近で動きがとれない米オバマ政権の足元を見透かしたようなロシア外交のしたたかさには驚かされる。
 ただ「米国抜き」の停戦・和平が本当に実現し、長続きするのか疑わしい。ロシアはアサド政権を存続させるつもりだろうが、民主化要求を弾圧した独裁的な強権政治が反政府デモと内戦の引き金になった経緯を忘れてはなるまい。ロシアがアサド政権の温存にこだわれば停戦が崩壊する恐れもある。
 ともあれ、まずは武器を置くことだ。そのうえで、当面の治安と安定を確保するためにロシアとトルコが骨を折るしかない。
 シリア国内の対立構図が単純化されれば、卑劣なテロを繰り返すISの壊滅に向けて国際社会も行動しやすくなるだろう。その先にようやく、シリア民主化の道筋も見えてくるはずだ。

[京都新聞 2017年01月05日掲載]

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