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給付型奨学金  さらなる制度の拡充を

 政府は返す必要のない給付型奨学金制度を創設し、2018年度から本格実施する。これまで国の奨学金制度には貸与型しかなく、一歩前進といえる。
 ただ、内容を見れば、対象者の数も給付額もまだまだ不十分だ。経済的理由で大学などへの進学を諦めたり、奨学金を返済しきれず困窮する学生が少なくない現実を直視し、さらなる拡充に努めてもらいたい。
 奨学金の利用者は年々増え、昼間部の大学生の2人に1人が利用する。親の収入が減る一方で、学費が上がり続けているからだ。年間の授業料は私立で平均86万円、国立でも54万円かかり、学費や生活費の工面に苦労する学生は増えている。
 日本の場合、給付型は地方自治体や私立大などが設けているが、奨学金事業の9割を占める国の奨学金(日本学生支援機構が運用)にはなく、貸与型に限られる。その約7割が有利子で実質的にはローンだ。
 卒業後も非正規雇用などで安定した収入が得られず、返済に困窮する人は少なくない。14年度の3カ月以上の滞納者は17万人を超える。結婚や出産をためらう原因にもなっており、自己破産に追い込まれるケースも珍しくなくなってきた。
 そんな中、遅ればせながら給付型に国が踏み出した意義は大きい。経済協力開発機構(OECD)の中では、これまで日本と、学費が無料のアイスランドだけが国による給付型奨学金がなかった。
 対象となるのは、住民税が課税されない低所得世帯の大学や短大の進学者で、1学年につき2万人。国公立大か私立大か、自宅生か下宿生か、などで月額2~4万円を給付する。
 児童養護施設の出身者らには入学時の一時金として24万円を別途支給し、17年度は児童養護施設出身者や経済的負担の大きい私立大の下宿生ら計約2650人を対象に先行実施する。無利子奨学金の枠も拡充する。
 問題は給付型の規模がまだまだ小さいことだ。住民税非課税世帯の大学などへの進学者は1学年に約6万人。受給できるのは3分の1にすぎない。日本学生支援機構が扱う奨学金の貸与者約132万人から見れば、ほんの一部だ。金額も学びの支えとしては不十分だろう。
 政府は17年度予算案に先行実施分を含む計約70億円を計上した。21年度からは給付額が年間200億円超に上る。今後、財源確保が課題になるが、家庭の経済格差を埋め、教育の機会均等を実現するという奨学金本来の在り方を追求してほしい。
 給付対象者については、文部科学省と日本学生支援機構が設ける推薦基準のガイドラインに基づき、各高校の判断で推薦するという。成績や部活動の実績だけでなく、家庭事情にも十分配慮し、支援を本当に必要とする人に届く制度にすることが大事だ。
 日本の国内総生産(GDP)に占める高等教育に対する公的支出の割合はOECDの中でも極めて低く、高授業料・低補助の国に分類される。「貧困の連鎖」を断つためにも、授業料減免の拡充などを含め、社会全体で多面的に学びを支えたい。

[京都新聞 2017年01月15日掲載]

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