社説 京都新聞トップへ

春闘経営側方針  労働環境改善に本気で

 経団連が2017年春闘の経営側方針を発表した。過労死や過重労働が社会問題になる中、長時間労働の是正など「職場環境の整備に強力に取り組む」ことを打ち出した。政府が力を入れる「働き方改革」に呼応した形だ。
 広告大手電通の新入社員過労自殺をきっかけに、社員に長時間労働を強いる違法残業が相次いで発覚し、管理職を含めた労働時間の適正管理が求められている。
 方針は、企業が優秀な人材を確保するためには、長時間労働の是正に社内の意識改革を徹底する必要があると指摘、労使合意があれば事実上無制限に残業ができる労働基準法見直しにも言及した。企業が働き方を見直すことに異論はないが、容易とは思えない。
 厚生労働省が昨年4月から9月に長時間労働が疑われる約1万事業所を監督指導した結果、43・9%にあたる事業所で長時間労働に伴う法令違反があったという。しかも、その半数以上で、過労死の危険があるとされる月80時間を超える100時間以上の残業が確認された。違法状態を放置してきた企業の責任は極めて重い。
 労働環境改善に、企業の本気度が問われているといえる。掛け声倒れに終わらぬよう、春闘交渉で具体的な成果こそ求めたい。
 賃上げに関しては、4年連続で各社に引き上げを呼びかけた。昨年11月に安倍晋三首相が2%以上の賃金アップを要請しており、今年も「官製春闘」が続く。
 安倍首相は今回、賃金水準を底上げするベースアップ(ベア)実施にまで踏み込んで要請した。景気の失速とアベノミクスの行き詰まりが見える中で、賃上げによる消費拡大で経済の好循環につなげたいとの強い意向がある。
 しかし、経団連はベアには慎重姿勢で、定期昇給やボーナスを含めた「年収ベースでの賃金引き上げ」を呼びかける。一方、連合は「2%程度を基準」にベアを求める方針を決定している。
 経営側が難色を示すのは、新興国経済の減速や米国経済の先行きが不透明なことが理由だろうが、企業の内部留保は377兆円にも達しており、賃金などへの還元は十分とは言い難い。勤労意欲を高め、消費行動につながるよう、ベアに踏み込んでほしい。
 さらに、大手と中小の賃金格差の是正も必要だ。働く人の4割を占める非正規労働者の賃上げも欠かせない。すべての労働者の待遇改善につなげられるか、労働組合の役割も問われる。

[京都新聞 2017年01月23日掲載]

バックナンバー