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疏水観光  知恵集めて課題克服を

 京都の観光は、かつて「待ちの観光」とも言われた。観光資源が豊富にあり、労せず黙っていてもお客がわんさか来る。観光都市としての知名度も高く、他都市からうらやましがられもした。
 ところが、地方衰退が叫ばれるなか、観光に活路を見いだそうと誘致に力を注ぐ自治体が増え、競争は激しくなった。この影響もあって京都を訪れる観光客は減少。今では5600万人を超えているが、20年前は3500万人にまで落ち込んだ。「殿様商売」では済まされない。そんな危機感が生まれたのだろう。京都は「攻めの観光」を意識するようになった。
 この意識改革こそが京都の浮上力とも言える。京都市が大津市とタッグを組んで琵琶湖疏水に観光船を運航する計画も一例だ。
 疏水事務所大津分所(大津市)から蹴上船溜り(京都市山科区)間の第一疏水(7・8キロ)に観光船を走らせるという大胆な発想は、待ちの姿勢では出てこない。
 計画が持ち上がった当初は、あんな暗いトンネルを通って本当に通船が可能かと、半信半疑の声も多かった。水深が1メートルと浅く、水路幅も4メートルしかない。船の離合も難しく、区間の半分がトンネルで夏はトビケラが大量発生する。
 さまざまな課題が山積するものの、2015年の春と秋に試験運航を始め、18年度に本格運航する予定だ。観光資源が少ないとされる山科の新たな観光にもなると期待されている。
 ただ、超えなければならない高いハードルがまだまだある。蹴上から大津に向けて運航できるかどうか。現在、大津分所からの試験運航は水流に逆らわないためスムーズに運航できるが、水流に逆らって進む時は大きな波が発生し、後続の船に影響が出る。
 最大の課題が採算性だ。船の便数も限られ、多くの人を乗せられない。乗船料を高くすれば客足が鈍る。試験運航では民間旅行会社のパックに組み入れて売っているが、採算が取れるとの判断には至っていないという。新たな観光資源を発掘する生みの苦しみでもあるが、関係者の知恵を結集すれば必ず克服できるはずだ。
 有名な社寺仏閣など既存の観光資源に頼るだけでは発展はない。03年に始めた東山の花灯路事業が新たな資源として注目され、嵐山にも広がった。戦後に創出した保津川下りも成功事例だろう。常に新たな魅力を発掘し、観光に生かす姿勢こそ重要だ。疏水の観光船を成功させたい。

[京都新聞 2017年02月06日掲載]

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