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自民党大会  物言えぬ組織になるな

 党総裁の任期延長へ本格議論を始めて半年足らず。さしたる異論のないままのスピード決着が、「安倍1強」の党内状況を象徴している。
 自民党はおとといの党大会で、総裁任期を連続「2期6年まで」から「3期9年まで」に延長する党則改正を決めた。来年秋の総裁選で安倍晋三総裁(首相)の3選出馬が可能になり、当選すれば任期は2021年9月まで延びる。
 安倍政権の長期化を見据えた改正なのは明らかだ。だがポスト安倍と目される岸田文雄外相、石破茂元幹事長のどちらも表立った反発や苦言を控え、影は薄い。
 物が言いにくいだけでなく、言うべきことを言わない。そんな不健全な空気の広がりを感じる。
 次期衆院選をにらみ、解散権をもつ首相の顔色を誰もが黙ってうかがう状況は当分、変わりそうにない。内閣支持率は安定し、国政選挙には4連勝中だ。党員数は8年ぶりに100万人を回復した。
 だが言葉を発しない党議員に、政治家たる資格があるだろうか。今国会では連日、森友学園への国有地売却問題が野党の厳しい追及を受けているが、首相夫妻との関わりが指摘される学園理事長を参考人招致することに、党内は及び腰だ。天皇退位をめぐる法整備でも、党内にはさまざまな立場があるにもかかわらず活発な論議が事実上封じられている。
 今回の党大会で採択した17年運動方針は、首相の悲願である憲法改正について「原案の発議に向けて具体的な歩みを進める」と掲げた。憲法のどこを変えるのかという項目選びをはじめ、天皇退位以上に多様な意見があるはずだが、今の様子ではまともな党内議論もなく手続きが進むのではないかという危惧(きぐ)さえ抱く。
 小選挙区制の導入とその後の官邸強化の中で、「1強」体制は生まれた。党総裁任期の延長により、権力集中を生む仕組みがさらに強固になったと言えるだろう。
 特定秘密保護法や安全保障関連法、環太平洋連携協定(TPP)承認、カジノ解禁法が「1強」下の強引な国会運営で成立した。それでも内閣支持率は40~60%を保つが、昨年の新潟県、東京都の両知事選、先月の千代田区長選では自民党推薦候補が敗れている。無党派層を中心に不満や不信は決して小さくないとみるべきだ。
 権力の集中と長期化が驕(おご)り、腐敗を生むのは歴史が証明している。党所属の一人一人が自戒し、本来の責務を果たさねばならない。

[京都新聞 2017年03月07日掲載]

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