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北朝鮮ミサイル  暴走阻止へ包囲強めよ

 止まらぬ暴走に強い憤りを禁じ得ない。
 北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイル4発を発射した。約千キロ飛び、うち3発が秋田県沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内に、残る1発もその近くに落下した。
 北朝鮮は、先月の日米首脳会談直後にも新型の中距離弾道ミサイルを発射している。国連安全保障理事会が北朝鮮による核・ミサイル開発を禁じた決議違反であり、立て続けの危険な挑発行為を断じて認めることはできない。
 今回の発射は、米韓両軍が1日から始めた合同機動訓練への対抗措置だ。昨年の米韓訓練の際も弾道ミサイルを相次ぎ発射しており、過去最大規模での今回の訓練を強くけん制したと言える。
 金正男氏殺害事件で北朝鮮は組織的関与を疑われており、4発もの一斉発射で国際的な批判の目をそらす狙いも透ける。だが、蛮行を重ねるたび世界で孤立を深め、自らの首を絞めるばかりだ。
 北朝鮮外交は、米朝交渉を通じた体制維持を最大目標としてきたが、トランプ米政権は厳しい姿勢を強め、「テロ支援国家」再指定による制裁強化の検討を始めた。数少ない友好国だったマレーシアとも金正男氏殺害事件を巡って関係が悪化。駐在大使が国外追放され、外貨獲得の足場は崩壊寸前だ。
 最大の痛手は後ろ盾の中国との溝だ。2月の発射後、中国は北朝鮮の主産品の石炭輸入を今年いっぱい停止すると発表。国連制裁決議の厳格な履行を求める国際圧力を考慮したとみられ、北朝鮮経済への打撃は避けられない。
 これ以上、国民生活を犠牲にして軍拡に走ることは人道上も許されない。国際社会との協調こそ唯一の選択肢であることを北朝鮮指導部に認識させねばなるまい。
 相次ぐ発射実験で北朝鮮の弾道ミサイル技術の高度化が進んでいるのは間違いない。安倍晋三首相は「北朝鮮が新たな段階の脅威」にあるとし、日米防衛協力の強化に前のめりだ。いずれにせよ完全な防御は不可能であり、ミサイルの種類や性能、運用能力などを冷静に見極め、現実的な対応策はどうあるべきか国民に説明する必要があろう。
 一方、米国などで北朝鮮が暴発する前に指導部打倒や敵地攻撃に踏み込む可否が語られ始めているのも危惧(きぐ)する。何としても不測の事態を避けるため、中国にいっそう影響力の断行を求め、国際社会で北朝鮮への包囲網を強めるよう外交努力を尽くさねばならない。

[京都新聞 2017年03月07日掲載]

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