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春闘集中回答  景気回復へ底上げ図れ

 2017年春闘は、自動車、電機など主要企業の回答が出そろった。多くの企業が賃金を底上げするベースアップ(ベア)に4年連続で応じたものの、上げ幅は2年続けて前年実績を下回り、最も低い水準となった。
 安倍政権が賃上げを呼び掛けてきた「官製春闘」は息切れ感が強く、景気押し上げ効果は見通せない。企業収益が賃上げ、消費へ回るというアベノミクスの「好循環」シナリオはいっこうに実現せず、手詰まりの打開が求められよう。
 4年目となる賃上げ要請で、安倍晋三首相は「少なくとも前年並みを」と訴えたが、定期昇給を含め2%超えは厳しい状況だ。経営側の慎重姿勢は、円高に一時振れて輸出などの収益が鈍った上、米トランプ政権の保護主義的な政策への警戒感からだろう。
 ベアを抑える一方、ボーナスでは満額回答も目に付いた。榊原定征経団連会長は「年収ベースの賃上げ」努力を強調し、過去3年のベア実施が消費拡大につながっていない状況に不満ものぞかせた。
 だが、物価を加味した実質賃金は昨年、5年ぶりに増加に転じたばかり。消費拡大には持続的に所得が増えるベアが重要で、最近の原油高や物資値上がりも考えれば経営側の対応は十分と言えない。
 大手を中心に昨秋以降の大幅円安で業績が上向き、最高益更新の企業も少なくない。長く利益をため込み、人件費を抑えてきたのがデフレの要因でもあり、より従業員への分配を意識すべきである。
 景気の足腰を強める上で、大手社員の賃金より大きく劣る非正規や中小企業で働く労働者の待遇底上げは不可欠だ。通信大手などで非正社員の手当、一時金の増額が見られ、賃上げと並ぶ焦点の働き方改革でも在宅勤務や休暇制度などの拡充が相次いだが、低額ベアに代わる「落としどころ」の側面も否めない。労使交渉の正面に据え、抜本的な格差是正と働く環境の改善に向き合ってほしい。
 今後は中堅、中小企業の交渉が本格化する。不足する人手を確保するためにも賃上げが求められるが、経費増が厳しい企業も多い。長時間労働防止などへの対応も必要で、一部企業で進む残業代削減分を賃金に積むような一体的な取り組みも参考にしてはどうか。
 政府は国民生活の底上げにしっかり軸足を置き、違法残業や不合理な下請け取引への監督強化を含め、非正規や中小企業の待遇改善を進めやすい環境づくりに力を入れる必要がある。

[京都新聞 2017年03月17日掲載]

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