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遺族補償年金  男女差是正は国の責務

 遺族補償年金の規定が、妻と夫の間で受給要件に差をつけていることは憲法の「法の下の平等」に反するかが問われた訴訟で、最高裁が「規定は不合理ではない」として合憲との初判断を示した。
 共働きが一般化するなど男女を取り巻く労働環境が大きく変化する中、半世紀前に設けられた規定を追認した判決に違和感を抱くが、男女の社会的格差がいまだに是正されていない現実を表していると言えよう。国は格差是正を積極的に推し進め、制度を見直す責務を負ったと考えなければならない。
 原告の男性は1998年、公立中学校の教諭だった妻を公務災害で亡くし、仕事が理由で亡くなった労働者の遺族に支払われる遺族補償年金を申請したが、認められなかった。同年金の規定では、配偶者が死亡した場合、妻は年齢に関係なく受け取れるが、夫は原則として60歳以上であることを受給要件にしているからだ。
 憲法14条は性別や社会的身分による差別を禁じるが、合理的理由があれば認められることもある。
 この男女差の規定が設けられたのは1967年で、「夫が働き、妻が家庭を守る」という家族モデルを背景にしている。当時は男性に比べて働く女性の数は少なく、平均賃金も低かったことから、一定の合理性はあっただろう。
 しかし、その後、社会で活躍する女性が増え、性別による役割分担の意識は希薄化している。現在の社会状況に照らして、男女差規定が合理的かどうかについて、下級審の判断は分かれた。
 一審大阪地裁は「性別で受給要件を分ける合理性は失われた」として、規定は違憲との判決を出した。一方、控訴審判決で大阪高裁は「現在でも妻に先立たれた夫より、夫を亡くした妻の方が自力の生計維持は難しい」として規定には合理性があると結論付けた。最高裁判決も高裁と同じ判断だ。
 ただ、東日本大震災を機に、母子家庭と子ども向けだった国民年金の遺族基礎年金支給が、2014年からは父子家庭も対象になるなど、男女差の解消は徐々に進んでいる。夫を亡くした妻に不利益とならないよう配慮しつつ、遺族補償年金でも、受給要件の見直しを進めるべきだ。
 今回と同じ問題が指摘された欧州では、1990年代に年金の男女平等が制度面で確立されたという。日本は85年に女性差別撤廃条例を批准しながら取り組みが遅れている。これでは安倍政権が目指す「女性活躍社会」もほど遠い。

[京都新聞 2017年03月23日掲載]

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