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朴前大統領逮捕  試される韓国の成熟度

 韓国で初めて大統領を罷免された朴槿恵(パククネ)氏が検察に逮捕された。収賄や職権乱用、機密漏えいなどの容疑がかけられている。
 民主的な選挙で選ばれた国のトップが、職務にかかわる不正で罷免されたうえ、逮捕されるとは、国家的な危機である。しかし「またか」という思いを抱く韓国民も少なくないのではないか。そこに韓国の不幸がある。
 大統領経験者の逮捕は全斗煥(チョンドゥファン)、盧泰愚(ノテウ)の両氏に次いで3人目。その他の元大統領にも不正蓄財やあっせん収賄、脱税などの疑惑がつきまとい、親族が逮捕されるケースは珍しくない。
 長く軍事政権が続いたが、1987年に初めて国民の直接選挙で大統領が選ばれ、民主化が進められてきた。しかし、それ以降もトップが関与する不正が後を絶たないのは、なぜなのか。
 圧倒的な権力が集中する大統領が帝王のように振る舞い、「虎の威」を借りる親族や側近の専横を許すという構造的な欠陥があるように思える。立法府(国会)と司法の権限が弱いため、在任中は大統領と周辺の不正を十分チェックできず、退任後に捜査に乗り出すパターンが繰り返されてきた。
 今回、検察が罷免直後の逮捕に踏み切ったのは政治腐敗に憤る世論の後押しがあってこそだ。韓国社会の成熟度が試されている。
 朴氏が本当に贈収賄に関与し、親友による国政介入を許していたのか、真相は捜査を待たねばならない。ただ、朴氏らに対する韓国民の激しい怒りの背景には、経済の低迷と格差拡大、雇用不安、財閥への反感など、現状への不満の蓄積があることは見逃せない。
 そうした風潮のなか、5月の次期大統領選は左派の野党候補が優勢とみられている。対日姿勢は厳しく、北朝鮮には融和的な新政権が誕生すれば、東アジア情勢に大きな影響をもたらすだろう。
 日本は慰安婦問題に関する日韓合意の継承と履行を求めていくことになろう。政権交代を理由に合意を反故(ほご)にすれば、国際的信用を失うことは韓国も分かるはずだ。
 核・弾道ミサイルの開発をやめない北朝鮮への向き合い方も気になる。朝鮮半島の緊張緩和は歓迎だが、危険で無法な振る舞いには日米韓が連携して断固たる態度を貫かねばならない。
 今後の捜査と裁判の行方とともに、韓国の政治と世論の動向を注視し、釜山の慰安婦像設置で冷却化した日韓関係を再構築する糸口をつかみたい。

[京都新聞 2017年04月01日掲載]

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