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シリア化学兵器  残忍な攻撃、許されぬ

 内戦が続くシリアで、化学兵器を使ったとみられる空爆で多数の死傷者が出た。アサド政権軍による攻撃との見方が強まっている。
 化学兵器の使用が事実であれば国際条約に違反し、戦争犯罪である。罪のない市民を巻き込む非人道的な攻撃は許し難い。徹底した調査で攻撃の実行者を突き止め、責任を追及しなければならない。
 反政府勢力が支配する北西部イドリブ県で4日、空爆後に多くの市民が呼吸困難に陥るなど毒ガスによるとみられる被害が広がった。世界保健機関(WHO)は、猛毒のサリンなど神経ガスが用いられた可能性が高いとみている。
 死者は少なくとも86人、負傷者も多数に上るという。子どもを含む多くの被害者の姿が世界に発信され、むごい光景に言葉を失う。
 アサド政権や、その後ろ盾となっているロシアは化学兵器の使用を否定しているが、米国は「アサド政権による憎むべき行為」「多くの一線を越えた」(トランプ大統領)と強く非難した。
 緊急開催された国連安全保障理事会で、米英仏は化学兵器使用の非難決議案の採択を目指したが、ロシアが反発し、自らの利害に固執する常任理事国どうしの対立が続いた。有効な手だてを講じられなければ、罪のない人々の犠牲をさらに生む。ここは駆け引きを排すべきではないか。
 そもそもアサド政権は2013年秋に化学兵器の全廃を約束し、化学兵器禁止条約にも加わった。サリンなどの廃棄を完了したとされるが、その後も化学兵器使用の疑惑が後を絶たない。化学兵器禁止機関(OPCW)と国連は昨年8月、アサド政権軍の塩素ガス使用を公表した。
 米英仏は今年2月にも安保理で非難決議を訴えたが、ロシアと中国が拒否権を行使した。毅然(きぜん)とした姿勢を示せない国際社会を尻目に、アサド政権が反体制派を化学兵器で攻撃し、支配拡大を図った可能性を否定できない。
 化学兵器は核兵器に比べ、簡易な技術や設備で製造できる。無差別に襲う殺傷力に加え、治療困難な重い後遺症で人々を苦しめる残忍さゆえに、1997年に化学兵器禁止条約が発効した。しかし、過激派組織「イスラム国」などが化学兵器を多用し、被害が拡大する危険性が増している。北朝鮮の開発・保有の疑惑も深まっている。
 日本をはじめ国際社会は、化学兵器廃絶に粘り強く取り組む必要がある。深刻な脅威を目の当たりにし、一刻の猶予も許されない。

[京都新聞 2017年04月07日掲載]

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