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ハンセン病法廷  さらなる検証が必要だ

 ハンセン病患者の裁判が、隔離先の療養所などに設置された「特別法廷」で開かれていた問題で、最高検が、違法な裁判に関与した責任を認め、謝罪した。
 最高裁と日本弁護士連合会はすでに反省と謝罪を表明しており、法曹三者がそろって公平公正であるべき裁判をゆがめていた、と認めた形だ。責任は重大で、しかも遅きに失したと言わざるをえない。
 裁判は公開の法廷で行うのが憲法の原則だ。裁判所法は最高裁が必要と認めれば、裁判所外で特別法廷を開けると定めるが、災害などを想定した例外措置である。
 ハンセン病患者の特別法廷は1948~72年に96件申請があり、取り下げの1件を除く95件すべてが許可された。最高裁の調査によると、裁判官15人全員で構成する裁判官会議が48年に設置権限を事務総局に与えると決定。事務総局は病状や感染の恐れの有無などを精査せず、診断書さえあれば形式的に設置を許可していた。
 医学的見地から隔離の必要はないと判明した60年以降も同様で、最高裁は昨年4月、調査結果を発表して「不合理な差別的取り扱いで裁判所法に違反する」と判断、誤った運用が偏見や差別を助長したと謝罪した。日弁連会長も昨夏、「弁護士も問題だと気づかなかった」と反省の弁を述べた。
 最高検は、53年に元患者が特別法廷で死刑判決を受け、62年に執行された「菊池事件」の弁護団に「責任を感じている。おわびしたい」と伝えた。しかし、再審請求はせず、60年以降の事件で確定判決の是正を求める非常上告も否定した。裁判記録が散逸し「違反は認められない」という理由だ。
 違法で差別的な取り扱いを認めながら、それによる被害は回復しない-とはどういうことか。
 そもそも記録が散逸するほど時間が経過したのは、司法の怠慢によるものだ。ハンセン病の隔離政策の根拠となった「らい予防法」は1996年に廃止され、政策の違憲性を認めた熊本地裁判決で国は2001年に元患者と和解し、謝罪。国会も責任を認める決議をしている。にもかかわらず司法は放置し続けた。不誠実に過ぎよう。
 元患者が無実を主張し続けた菊池事件は、3回の再審請求が行われたが退けられた。弁護団は、最高検が再審請求しないのは国家公務員の義務を怠っているとして国家賠償請求訴訟を起こすという。特別法廷でどんな裁判が行われたのか、さらなる検証が必要だ。謝罪で終わらせてはならない。

[京都新聞 2017年04月12日掲載]

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