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自殺大綱  産後うつ対策も強化を

 厚生労働省の有識者検討会が、今夏に閣議決定する新たな自殺総合対策大綱の報告書をまとめ、自殺者数を今後10年間で30%以上減少させる目標を明記した。
 国内で自ら命を絶った人は1998年から14年連続で3万人を超え、2003年に3万4427人に達した。近年は減少を続け、16年は2万1897人まで減った。
 ただ、先進国では依然として高い水準にある。報告書は「非常事態がいまだ続いており、楽観できない」と指摘し、人口10万人当たりの自殺者数(自殺死亡率)を、15年の18・5人から30%以上減らし、26年までに13・0人以下にするよう求めた。米国では14年に13・4人、英国は13年に7・5人だったことなどを踏まえた目標だ。痛ましい自死を少しでも減らせるよう、取り組みを強化したい。
 日本では06年に自殺対策基本法が施行され、07年に指針となる初の大綱を策定。現在の大綱は12年8月に決定した。相談・支援体制の充実や多重債務、過労対策を打ち出し、12年の大綱で、いじめ自殺対応や東日本大震災の被災者ケア充実も盛り込んで、07年から10年間で20%減少させる目標は達成した。だが、経済状況などに左右されることから油断は禁物だ。
 新たな大綱で注目されるのは、若者世代の対策や働き方の問題、「産後うつ」などを原因とする妊産婦の自死対策強化だ。
 自殺者数を年齢別でみると、各年代で減少している中、10代は500~600人台で横ばいの状況だ。いじめ問題も依然深刻で、報告書は学校での「SOSの出し方教育」の推進やスクールカウンセラーなどを含めた地域としての対応が必要としている。
 昨年、電通の新入社員の過労自殺が明らかになり、特に若い世代の長時間労働是正やパワハラ防止、メンタルヘルス対策は急務だ。厚労省の17年版白書によると、15歳から39歳までの死因の1位は自死だった。心理的に追い込まれた若者たちが駆け込める場所を拡充させる必要がある。
 「産後うつ」問題は今回初めて取り上げられた。日本では対策が遅れていると指摘する専門家もおり、厚労省は来年秋に初の調査結果を公表する。早期発見や育児の悩みを抱える母親への支援などにきめ細やかな対策を求めたい。
 16年の法改正で地方自治体も防止計画策定を義務付けられた。自死防止に大きな役割を果たしてきた民間団体と連携し、地域の特性に合わせた取り組みを進めたい。

[京都新聞 2017年05月26日掲載]

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