社説 京都新聞トップへ

個人情報保護法  改正で過剰反応が心配

 私たちの個人情報をめぐる大事な動きなので注意しておきたい。きのう施行された改正個人情報保護法である。
 個人情報の保護を強化する一方で、ビッグデータへの活用を後押しするのが目的だ。
 個人情報の流出が相次いでおり、法改正の必要性は多くが認めていよう。しかし、一方で保護の強化が進むことで、健全な社会に欠かせない情報の流通や共有化が弱まっていく。それが心配だ。
 2005年に個人情報保護法がスタートした際、自治会の名簿や学校の連絡網が作れないで困るケースが相次いだ。一昨年の茨城県・鬼怒川の決壊では、自治体が行方不明者の氏名を公表しなかったため、安否確認が進まなかったこともあった。
 過剰反応や、災害時の例外規定を理解していないためだが、こうした事例は少なくなかった。
 今回の法改正で、5千人分以下の個人情報を扱う事業主を除外する規定がなくなり、個人事業主や地域の自治会なども規制の対象になった。個人情報の不正提供や盗用は罰せられる。
 たとえば学校のPTAも対象になる。名簿作りでは会員に目的を通知し、第三者に提供する時には本人の同意が必要だ。名簿作成を委託するなら、委託先の監督が求められる。
 対象が広がったことで、さまざまな戸惑いが生まれよう。新設された政府の個人情報保護委員会は、具体的にルールを示し、問い合わせに対応してほしい。
 分かりにくいからと情報をむやみに保守し、必要な時に使えなくなれば困る。災害時だけでなく、社会的な公共性と個人情報のバランスを日頃から考えておきたい。
 ビッグデータへの活用にも、大きな期待と同時に懸念がある。
 インターネットやGPS(衛星利用測位システム)が記録する個人の購買履歴や車の走行履歴を大量に集めて、大きなビジネスをつくり出そうとの国家戦略である。
 法改正で、本人と特定できないよう個人情報を加工すれば、本人の同意なしで売買できるようになった。しかし、氏名などを削除して加工しても他の多くの情報と付き合わせていけば個人の特定は可能になる、との指摘もある。
 ネットで内容も読まずに「同意」をクリックする。本人が知らないところで、いつの間にか個人的な嗜(し)好や傾向が取り出され、利用される。個人情報について考える必要があろう。

[京都新聞 2017年05月31日掲載]

バックナンバー