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パリ協定離脱  米の責任放棄許されぬ

 米トランプ大統領が温暖化対策の新しい国際枠組み「パリ協定」から離脱すると発表した。大統領選挙の公約を優先した形だが、世界第2位の温室効果ガス排出国の責任を放棄する暴挙である。
 国際社会は米国の決定を厳しく批判し、撤回を求めている。日本政府は先頭に立ち米国に対し踏みとどまるよう働きかけてほしい。
 米国が温暖化対策の国際合意から抜けると宣言するのは2001年の京都議定書離脱に次ぎ2回目。今回も米国内経済に悪影響を与えるという理由だ。
 だが、温暖化被害の深刻さや世界的な対策の進み具合が当時とはまったく違う。トランプ氏は再交渉を求めるというが、もはや後戻りは不可能だ。パリ協定は147カ国が批准している(6月1日現在)。離脱は米国の国際的な孤立を招き、結局は自国の利益も損ねるのではないか。
 懸念されるのは、離脱が各国にもたらす影響だ。トランプ氏は財政負担の即時停止を宣言した。途上国は先進国からの資金提供を前提にパリ協定に合意した経緯がある。資金不足は途上国の対策の遅れにつながりかねない。
 日本への影響も心配だ。日本は京都議定書をまとめながら米国の離脱後は「米中の参加が必要」と主張し、政府も産業界も議定書を実質的に否定してきた。それが現在の石炭火力発電の増設や海外輸出につながっている。
 パリ協定には米中だけでなく、新興国や発展途上国も参加している。こうした包括協定を最も強く望んだのは日本である。米国の不参加を理由にした怠慢はもはや許されない。
 トランプ政権の決断は米国の総意とはいえない。カリフォルニア州などでは排出量取引をはじめ先進的な取り組みを始めている。今回も電気自動車メーカーなどからすでに批判の声が上がっている。こうした人たちが米国内でトランプ氏に翻意を促すよう求めたい。
 トランプ氏は中国やインドの排出削減義務が米国より少ないことを「非常に不公平」という。しかし、歴史的な累積排出量は米国が最大だ。パリ協定の「親条約」である気候変動枠組み条約は「公平だが差異ある責任」があると明記している。世界の科学者でつくるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)も累積排出量と気温上昇が比例すると指摘する。米国の責任は明らかではないか。パリ協定からの離脱は、人類の歴史への背信行為である。

[京都新聞 2017年06月03日掲載]

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