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「喫緊の脅威」  冷静に情勢見極めたい

 アジア安全保障会議のためシンガポールを訪れた稲田朋美防衛相、米国のマティス国防長官、韓国の韓民求国防相が会談し、北朝鮮の核・ミサイル開発計画を「喫緊の脅威」として、北朝鮮に国連決議を順守するよう圧力を強めることで一致した。
 「北」に融和的とされる韓国の新政権を含め、日米韓3カ国が認識を共有したことには意義がある。弾道ミサイル発射を繰り返す北に対し、圧力と対話の両面で足並みをそろえたい。
 国連安全保障理事会も前日、米主導の対北制裁決議を全会一致で採択した。これまでの制裁対象に14個人・4団体を追加する内容で、日米が求める石油禁輸には踏み込まなかったものの、核実験以外で安保理が制裁決議をするのは異例だ。先週の米国の大陸間弾道ミサイル(ICBM)迎撃実験、日本海に米空母2隻を派遣しての日米共同訓練とあわせ、国際的な包囲網を北も意識していよう。
 問題は、こうした圧力が北朝鮮を核開発の凍結・放棄に向けた対話の場に引き出せるかどうかだ。
 北の後ろ盾である中国の影響力行使を、米国は促し続けている。一方でトランプ米政権は先月、中国が軍事拠点化を進める南シナ海での「航行の自由」作戦を、政権発足後初めて実施。今回のアジア安保会議ではマティス氏が講演で、中国の海洋進出は国際法違反だと強く批判し、米国から台湾への武器供与の継続にも言及した。
 米国には、石油禁輸を示唆しつつも静観を続ける中国を動かしたいとの思惑があるのかもしれないが、かえって両国関係がこじれる恐れもある。そもそもトランプ政権の外交・安全保障政策はいまだ不透明だ。北朝鮮問題で中国の協力を得る代わりに南シナ海問題では米国が妥協するのではないか、との疑念も同盟国の間にくすぶっている。
 日本は冷静に状況を見て対処する必要がある。着実に能力を向上させているとみられる北の核・ミサイルは脅威だが、まずはその技術水準が実際にどの程度なのか、詳しい把握を急ぎたい。政府の検討する弾道ミサイル防衛(BMD)体制の強化に加えて、自民党からは「敵基地攻撃能力を保有すべきだ」との主張も出ている。専守防衛を逸脱するような現実離れした議論には注意を促したい。
 7月にG20首脳が集まるドイツでも北朝鮮問題は焦点の一つとなるだろう。日本には、現実の情勢分析に基づく複眼的な思考が求められよう。

[京都新聞 2017年06月05日掲載]

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