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性犯罪厳罰化  切実な訴え、法の成立を

 性犯罪を厳罰化する刑法改正案がきのう、衆院法務委員会で可決された。
 女性に参政権がなかった明治時代にできた刑法は、被害者であるのに女性の尊厳や人権への考慮に欠け、時には辛い思いをさせてきたといえよう。
 改正は遅すぎたが、性犯罪に苦しめられた人にとって大きな一歩となるに違いない。
 国会では後出しの「共謀罪」法案が、慣例に反して先に審議入りした。性犯罪は切実な問題であり、重くとらえるべきだ。国会論議を深めて改正法案を磨き、会期末までに成立させてもらいたい。
 改正案のポイントの一つは、「親告罪」の規定をなくした点だ。周囲の目などから被害を警察に届けるのはわずかという。告訴がなくても捜査する。それだけ重大な犯罪なのだ。
 強姦(ごうかん)は「魂の殺人」と言われながら、懲役5年以上の強盗罪よりも罪は軽い。改正案で刑の下限を懲役3年から5年に引き上げるのは、妥当な是正というべきだ。
 強姦罪の名称を「強制性交等罪」に改めている。性交だけでなく類似の行為も対象に入れ、被害者に男性を含めたのは、性犯罪の現状に即してのことだ。
 さらに家庭内の性的虐待を念頭に、「監護者性交等罪」を新設した。親などが影響力を利用し18歳未満の者に性的行為をすれば、暴行や脅迫がなくても罪に問える。
 しかし、強制性交等罪の要件に強姦罪と同じ「暴行、脅迫」が残ったのは疑問だ。明白な暴行がなくても、恐怖で抵抗できないことも少なくない。被害者の支援団体は要件の撤廃を求めている。
 「監護者」について、親だけでなく子どもと密接に関わる者も対象に含めるべきとの指摘がある。国会で議論を詰めてほしい。
 性犯罪の対策は刑法改正だけで済まない。被害者支援や再犯防止の施策が欠かせない。
 自治体のワンストップ相談窓口を、地域のばらつきなく充実させたい。被害を受けた時の動画や写真をインターネットから削除するなど、二次被害への対処をしっかりしないと、本当の救済にならない。
 加害者には罰するだけでなく、行動療法など更生プログラムを実施していくことで、再犯を減らしたい。専門指導員を増やすなど刑務所の体制を強化してほしい。
 長く望んだ刑法改正に向け、被害者たちが声を上げるようになった。実名で体験を語る女性もいる。切実な訴えに耳を傾けなければならない。

[京都新聞 2017年06月08日掲載]

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