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公営住宅に石綿  行政は実態把握を急げ

 国、自治体に一刻も早い対応を求めたい。
 発がん性のあるアスベスト(石綿)が全国の公営住宅の少なくとも2万2千戸に使われていたことが、民間団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」などの調査で分かった。
 多くは1988年以前に建てられ、既に除去工事などの対策がとられている。ただ、それまで長期間気づかずに暮らしていた人は少なくないだろう。居住者は23万人に上るとの試算もあり、患者と家族の会が設置した2日間の無料相談電話には全国から問い合わせが殺到したという。
 断熱性に優れた石綿は1956年から50年間、建物の壁や天井に広く使われた。今回の判明分はその一部にすぎないとみるべきだ。
 行政機関は過去の使用実態をより詳しく把握し、情報を公開する必要がある。記録が残っていない自治体も何か手がかりがないか、いま一度調べ直してもらいたい。
 石綿が注目されたきっかけは、2005年の「クボタショック」だ。兵庫県尼崎市の旧クボタ工場の従業員や周辺住民に健康被害が広がっていることが分かり、06年に石綿の製造と使用が全面禁止された。併せて救済法が施行され、石綿による肺がんや中皮腫の患者、遺族は、労災の適用外であっても支援の対象になった。
 石綿を吸った人に必ず健康被害が生じるわけではない。とはいえ油断できないのは、20~50年とされる潜伏期を経て発症する人がこれから増える恐れがあるためだ。
 患者と家族の会は、調査した物件名をホームページで公表している。京都では田辺団地、滋賀では石山東、田代ケ池、永保、永原第二、渋川、安井川、中央(大津)、千草西団地の計9件の名が掲載されている。この中には、人が吸い込む可能性の低い箇所への使用も含まれる。
 調査に協力した大学教授は「(石綿に)どの程度触れていたか、当時の生活状況などを確認してほしい」と呼びかけている。新たな相談体制や、石綿の使用状況などを集約した全国データベースの構築も提言している。行政機関は真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
 クボタショック後、工場だけでなく民間を含む住宅の石綿リスクが指摘されてきたが、国や自治体はそのリスクに十分に目を向けてこなかった。今回の調査の背景には、健康被害の早期の発見・治療につなげたいという遺族らの切実な思いがある。行政は、こうした声に応えなければならない。

[京都新聞 2017年06月17日掲載]

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