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児童虐待最多  支援する人材拡充急げ

 児童虐待の件数がまた、過去最多を更新した。
 全国の児童相談所が2016年度に対応したのは12万2578件(速報値)で、集計を始めた1990年度から26年連続の増加となった。初めて10万件を超えた15年度と比べても1万9292件(18・7%)増えた。
 四半世紀の間に対応件数が100倍を超える憂うべき状況だが、児童虐待は家庭内の問題ではないという社会的意識が高まり、相談・通告が増えたことが大きい。子どもたちの心と体、命を守る対策をこれまで以上に急がなければならない。
 内容別では、暴言や無視、子どもの目の前で父親が母親に暴力を振るうなどの「面前ドメスティックバイオレンス(DV)」による心理的虐待が約1万4千件増え、全体に占める割合の半分を超えた。夫婦間の暴力沙汰を警察が処理し、児相に通告するケースが増えるなど見過ごされていたケースが掘り起こされた側面もある。早期発見と被害防止が重要だ。
 厚労省の専門委員会は今回初めて、15年度に死亡した子どもについて、虐待死とみなされなくても疑われるケースの報告を自治体に求めた。その結果、8人を独自に虐待死と判断、無理心中を除く虐待で死亡した子どもは14年度から8人増の52人となった。虐待死については、厚労省の集計が実態を反映していないとの指摘があり、千葉大と千葉県は独自に再調査に乗り出している。丁寧な分析で再発防止につなげてほしい。
 問題は、保護者や子どもに対応する人員の不足だ。15年前と比べると、虐待件数は約5倍に増えているが、対応する児童福祉司の人数は約2倍にとどまる。厚労省は昨年、現在約3千人の児童福祉司を4年間で550人増やす計画を発表したが、これでは十分な対応ができないことは明らかだ。
 昨年5月、児相への弁護士配置や強制的に家庭に入る「臨検」手続きの簡略化などが決まり、先の国会では家庭裁判所の関与を強化する改正児童福祉法が成立した。児相の権限強化は進むが、新たな業務が加わって事務作業が増え、現場を圧迫する懸念もある。さらに大幅な人員拡充は不可欠だ。
 ただ、児童虐待に対応するのは児相だけではない。虐待の背景には地域から孤立した家庭の増加や貧困が指摘される。子育てを支援する自治体や民間団体の役割を見直し連携を強化する必要がある。
 社会全体で子どもを守り、育てる意識をもっと高めたい。

[京都新聞 2017年08月21日掲載]

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