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脱「地震予知」  現実直視した対策こそ

 現在の科学では、地震の場所や時期、規模を、高い確度で予測することはできない。
 先週、中央防災会議の有識者会議がまとめた報告書案である。かねて専門家が指摘していた「地震予知は不可能」との考えをはっきり示した意味は大きい。
 予知への過大な期待が対策をゆがめてはならない。科学の限界を直視し、予知を前提にしない防災・減災を進めていく必要がある。
 有識者会議は、東海地震の予知を可能とした被害軽減策である大規模地震対策特別措置法(大震法)について、40年ぶりに抜本見直しを検討していた。
 結論は先送りされたが、予知の前提が崩れた以上、大震法は廃止すべきだろう。鉄道の運休など強制力を持つ法だけに、改正で済まさず新たな策を検討した方が理解されやすい。
 まず、地震予知は無理という認識を、政府機関から自治体、地域、住民まで広く共有することが大切だ。その上で、日頃から「突然」の地震に備え、事前の対策や行動シナリオを練っておきたい。
 直近の予知は不可能でも、さまざまな観測記録や過去の事例から示された予測や想定まで否定されておらず、役立てたい。
 南海トラフ地震は100~200年ごとに発生しており、政府は30年以内にマグニチュード8~9程度の地震が起きる確率を70%としている。最大死者30万人超、経済被害220兆円。こうした想定は、対策を立てて被害を減らしていくための出発点だ。
 過去に南海トラフ地震は他の地域から連動して巨大化した。こうした事例を有識者会議は示し、同様の可能性がある場合、事前の避難を促すよう提案している。対象地域の自治体から政府による事前情報を求める声も出ている。
 ただ、地震は起きず「空振り」になる可能性がある。災害情報の受け止め方で、社会的合意を形成しておくことが欠かせまい。
 いつかは分からないが、いつか必ず起きる地震。被害の広域化、多様化が進む中で、対策は複雑化し、政府の事前・事後の対策がより重要になっている。住民に近い自治体の役割はさらに大きい。
 しかし、建物の耐震化は思うように進まず、高齢化する地域での支援に不安が募る一方だ。
 政府、自治体は防災計画が地域で機能するか点検する必要がある。マンパワーは十分か。脱「地震予知」を地震対策を見つめ直す機会としたい。

[京都新聞 2017年08月29日掲載]

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