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消費税使途変更  財政規律が一段と緩む

 衆院解散・総選挙に向けて安倍晋三首相は消費税の使い道を変える方針を明確にした。
 2019年10月に予定される税率10%への引き上げに伴う増収分から約2兆円を幼児教育の無償化などに充てるという。
 消費税増税については、12年の旧民主党と自民党、公明党の合意で税収の使い道を年金、医療、介護、子育て支援の社会保障4分野に限定し、10%増税の増収分は国の借金返済に使うことになっていた。
 社会保障制度の維持に向け、借金財政から脱するのが合意の狙いだった。選挙の争点にするのは、社会保障財源を政争の具にしないという合意の精神に反している。
 消費税増税を巡っては、民進党の前原誠司代表も教育への使途拡大に言及している。そもそも争点になるだろうか。国会で議論しておくべき課題ではないか。
 自民党内には教育無償化に向けて「こども保険」創設が議論されていた。首相の方針転換が唐突な感を否めないのは、そのせいでもある。
 財政規律が一段と緩むことも心配だ。
 借金返済に充てるはずのお金を教育に回したとしても、将来世代にツケがまわるだけではないか。
 安倍首相は20年度に財政を黒字化するという健全化目標が達成不可能と認めたに等しい。
 先にまとめられた18年度政府予算の概算要求は約101兆円と、4年連続で100兆円超に膨らんでいる。
 社会保障費を筆頭に、防衛費も過去最大規模になる勢いだ。概算要求段階では金額が示されない要求も巨額になる見込みという。
 こうした中で、日本の国と地方の借金はすでに1千兆円を超えている。消費税の使い道を変えるなら、いつまでに黒字にするのか、どのような歳出改革を打ち出すのかも併せて示すべきではないか。
 もちろん、子育て世代への手厚い支援や高等教育の無償化は検討に値する政策だ。
 だが、本当にすべて無償にすべきなのか。「ばらまき」ではない方法を議論すべきだろう。
 20年代には団塊の世代が後期高齢者になり、医療、介護の費用は確実に増える。どう対応していくのか。
 消費税の使途組み替えを打ち出すなら、財政や社会保障の大枠の構想も緻密に示して信を問うべきではないか。
 選挙戦では、与野党とも議論を避けないでほしい。

[京都新聞 2017年09月27日掲載]

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