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新聞週間  「事実」見極める大切さ

 過疎化が進む京都府北部のまちに都市から移り住んだ人がいる。生まれ育ったこの地で自らの仕事を極めようという人もいる。
 地域に愛着と誇りを持って歩む姿がまぶしい。本紙の丹後中丹版で8月まで長期連載した「ふるさとNEXT」で、こうした人々の思いを地域課題とともに報じた。
 ささやかな日常を大切に、地道に頑張る人たちに寄り添い、生の声をすくい上げる-。地方紙に求められた大きな役割と考える。
 「新聞週間」がきのうから始まった。折しも、衆院選のただ中である。政党や候補者が示す地域の将来像をどのように伝えるか。新聞の真価も問われている。そう自戒しながら報道にあたりたい。
 心しておかねばならないことがある。メディアに頻出するフェイク(偽)ニュースの存在だ。
 トランプ氏が当選した昨年の米大統領選では、対立候補をおとしめる偽ニュースがインターネットなどで流布された。就任後も事実と異なる情報が発信され、それを指摘されると「オルタナティブ・ファクト(もう一つの真実)だ」と側近が開き直る場面もあった。
 英オックスフォード英語辞書が2016年を表す言葉として選んだ「post-truth(ポスト真実)」は、客観的事実より感情への訴えかけが影響力を持つ状況を指す。うそを事実と強弁して異論に耳を傾けず、自分と同じ考えの持ち主とだけつながって安心感を得る。困ったことに、こうした現象が世界中に広がっている。
 意見が異なる相手との対話を拒否するかのような風潮が、社会の分断を加速させないか心配だ。
 日本も例外ではない。
 昨年の熊本地震では動物園からライオンが逃げたとのデマが流された。ネット上には、根拠不明の情報や読むに耐えない個人攻撃などが山のように掲示されている。
 ネットで拡散すると、真偽にかかわらず既成事実化することがある。事実かどうかを確認・検証する作業は、ますます重要だ。
 「ふるさとNEXT」に登場した人々に共通するのは、地域の人たちとの深いコミュニケーションを通じて信頼を得ていることだ。人と人が直接つながる世界に、うそは入り込めない。ネットに飛び交う「虚」の情報を消費する姿勢とは対極にあるといえるだろう。
 今年の新聞週間の代表標語は「新聞で 見分けるフェイク 知るファクト」。地域でひたむきに生きる読者に、事実にしっかり裏打ちされた紙面で応えていきたい。

[京都新聞 2017年10月16日掲載]

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