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臓器移植法20年  「善意」生かせる体制を

 臓器移植法の施行から20年になる。脳死を人の死と認めるかどうか-激しい議論を経て法制化され、移植に限り脳死を人の死と認めて「命のリレー」は始まった。脳死判定は480例、移植数も2千例を超えたものの、移植医療を巡って解決すべき課題はなお多い。
 脳死段階からの臓器移植は日本では長らく停滞し、世論や国会を二分する論争の末、1997年10月に同法が施行された。2010年に臓器提供の要件を緩和した改正法が施行され、家族の承諾だけでも提供が可能に。15歳未満の小児からの提供も認められ、ドナー(臓器提供者)は大幅に増えた。
 ところが、臓器移植ネットワークによると、提供数は年間30~60件程度で、移植を受けられる患者は限られる。これに対し、重い心臓病患者など約1万4千人が国内で移植を待っており、慢性的なドナー不足は否めない。
 国内での移植を待ち切れず、募金などで多額の費用を集め、海外で移植を受ける渡航移植が子どもを中心に続いている。国際移植学会が08年、臓器売買の懸念から渡航移植の自粛を求めたのをきっかけに10年の法改正に至ったことを改めて思い起こしたい。
 13年の内閣府調査で、自分が脳死と判定された場合、臓器を「提供したい」「どちらかといえば提供したい」との回答が43・1%に上り、15年前より10ポイント以上増えた。死後に臓器を提供したいと考えている人は決して少なくない。
 なぜドナーが足りないのか。一つには家族が臓器提供を申し出ても、複雑な手続きに対応できる病院が少ないことが指摘される。
 脳死での提供ができるのは高度医療に取り組む大学病院などに限られ、うち脳死判定といった移植実施の体制を整えているのは約半分。小児からの提供に対応できるのはさらに限定され、申し出が移植へ進まない例があるという。
 せっかくの「善意」を生かせないのは残念だ。臓器提供は病院にとって人手や費用に加え、ドナー家族のケアといった負担は重い。少しでも軽減するため、移植コーディネーターの拡充など国レベルで体制を整備していく必要がある。
 現代の医療では臓器移植でしか救えない命がある。国は体制やルールを整え、脳死判定や臓器提供に対する国民の理解を得る取り組みが欠かせない。とはいえ臓器提供は強要されるものではない。脳死や移植医療は死生観や倫理観が深く関わる。私たちもいま一度、理解を深める機会としたい。

[京都新聞 2017年10月25日掲載]

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