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草津白根山噴火  自然恐れ万一に備えを

 あらためて火山列島に住んでいることを思い知らされた。
 前触れもなく襲ってきた、群馬県の草津白根山噴火である。大きな噴石が降りかかり、訓練中の自衛隊員1人が死亡し、隊員とスキー客計11人が重軽傷を負った。
 火山は美しい自然景観を形成し、温泉やスキー場といった行楽の場を提供する。一方、隣り合わせで、突然の噴火や有毒ガスの流出など危険が潜んでいることを忘れてはなるまい。
 日本列島には111の活火山ががあり、半数近い49の火山では周辺自治体や観光施設に、登山客や住民の避難計画を作るよう義務付けられている。
 2014年の御嶽山噴火を受けて改正された「活火山法」に基づくが、まだ3分の2が作成途中だという。火山活動が長年停滞しているからといって油断しているとしたら、今回の噴火が警告を発したといえよう。
 避難計画やハザードマップ作りを急ぐ必要がある。専門知識に乏しい自治体には、関係機関や専門家が支援してほしい。不足している専門家の育成も欠かせない。
 御嶽山噴火以来、国や自治体は対策を進めている。50の火山を常時観測・監視し、草津白根山を含め38の火山で噴火警戒レベルを発表している。しかし、専門家は「十分とは言えない」と指摘する。
 草津白根山は白根山、逢ノ峰、本白根山からなるが、噴火したのは想定外の本白根山の火口で、監視・観測網は手薄だった。
 監視・観測していても、前兆をとらえられたか疑問との指摘もある。気象庁は、マグマの熱で高温、高圧となった地下水が爆発的に噴き出す水蒸気噴火の可能性が高く、そうだとしたら前兆の地震活動はなく「不意打ちになりがち」と説明している。
 自然現象の多くが未知の領域にある。災害を減らすために、対策を強化し、科学による解明を進めるのはもちろん重要だが、限界があることを肝に銘じておきたい。
 いつ起きるか分からないからといって、火山噴火への備えがおろそかになっていないか。火砕流の破壊力だけでなく、広範囲に及ぶ降灰は交通・電気・通信網をまひさせ、社会に深刻な打撃を与える。被害の最小化、早期復元への仕組みを用意しておく必要がある。
 私たちの心掛けも大事だ。火山に近づく時は事前に情報を入手し、避難の方法も考えておこう。
 人も社会も、自然に無頓着、傲慢(ごうまん)であってはいけない。

[京都新聞 2018年01月25日掲載]

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