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白票水増し  民意をゆがめる重大事

 民主主義の根幹に関わる、由々しき問題だ。
 昨年10月の衆院選滋賀4区の開票作業で、甲賀市選挙管理委員会の職員らが数百票の白票を不正に水増ししていたと市選管が発表した。投票総数に対して開票数が足りず、未使用の投票用紙を加えてつじつまを合わせたという。公職選挙法違反にあたる行為である。
 関わったのは、選管事務局長を兼務する市総務部長ら幹部3人だ。選挙事務トップが自ら不正をしたことにあぜんとする。当選者と次点候補には1万5千票余りの差があり、当落に影響しないとはいえ、言語道断だ。
 市選管によれば、開票作業中に票の不足に気づき、未開封の投票箱が投票所などに残されていないか探したものの見つからず、3人が相談して白票を加えた。選挙結果の確定後、片付けの際に開票所内で未開封の投票箱1個が見つかったが、中にあった票は集計せず廃棄したという。
 結果、候補者名が書かれていたはずの票が白票に置き換えられ、数百票分の民意がゆがめられた。今月1日の内部通報がなければ、事実そのものが葬り去られた可能性が高い。
 岩永裕貴市長はきのう、不正の背景について「職員の法令順守の意識の低さ」を挙げて陳謝した。市議選との同日実施で台風も重なり、開票作業の進行を焦ったという事情もあるようだ。
 票の不足に気づいた時点で落ち着いて対処していれば、票の水増し、廃棄と不正を重ねることなく済んだだろう。順法意識の欠如に加えて、開票の遅滞は許されないとの思い込みや、過剰なプレッシャーが職員らになかったか。当日の経緯を一つ一つ振り返り、作業手順の確認や相互チェックを怠るといった組織的な問題がなかったかどうかも詳しく検証する必要がある。
 票の不正処理は他県でも過去に起きている。国政選挙では2013年参院選で高松市選管、14年衆院選で仙台市青葉区選管でそれぞれ白票を水増しする公選法違反事件があり、職員らが懲戒免職処分になっている。
 各地で不正が相次ぐのは、過去の教訓が自治体に広く共有されていない証拠でもあろう。行政への信頼も損なわれかねない。甲賀市選管は今後の警察の捜査に協力するのはもちろん、自ら不正の原因と経緯を徹底究明して課題を明らかにし、再発防止につなげなければならない。

[京都新聞 2018年02月07日掲載]

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