社説 京都新聞トップへ

引きこもり調査  実態踏まえた対策急げ

 不登校などをきっかけに引きこもりが始まり、期間が10年以上に及ぶケースも目立つ。高齢になるほど生活の苦しさが増す-。
 京都府が初めて実施した引きこもりの実態調査で、こうした厳しい状況が明らかになった。個々の把握が難しい問題だけに、現実を具体的に浮かび上がらせた意義は大きい。本来は将来のために学校で学んだり、企業で働いたりしているはずの人材が社会に参画していないことは大きな損失だ。府は結果を踏まえて危機感を強く持ち、居場所づくりや復学、就労の訓練などの対策の拡充を急ぐべきだ。
 調査は、国の定義に合わせて、買い物や趣味の用事でしか外出しない状態が半年以上続いている人を対象にした。国は上限年齢を39歳としているが、府は限定しなかった。民生・児童委員、民間支援団体の協力を得て把握できた1134人の現状を本人や家族、支援者らから聞き取った。
 調査結果によると、引きこもりのきっかけは「不登校」が24%で突出し、「職場になじめなかった」と「人間関係がうまくいかなかった」が各10%で続いた。不登校をきっかけとした人は20代で34%を占めた。生徒や学生らの将来には大きな可能性がある。フリースクールの活用などを含めて学校現場で粘り強く対応し、不登校期間を長引かせないことが肝要だ。
 気になるのは、30代で「就職活動がうまくいかなかった」ことを挙げる人が12%に上った点だ。雇用環境は改善しているが、就職機会を逃し、孤立したままの若者がいることも忘れてはならない。
 引きこもりの期間は「10年以上」が28%に達し、長期化していることも分かった。暮らしぶりは20~40代で「どちらかと言えばゆとりがある」が多いが、50代は「どちらかと言えば苦しい」が上回る。50代と60代以上は生活保護受給者が10%を超え、親に依存してきた姿が浮かぶ。親の介護費や病気の治療費がかさみ、生活苦に陥ることも容易に想像できる。
 国が2015年に行った調査によると、15~39歳の引きこもりは全国で約54万人とされる。18年度は初めて40~59歳も調べる方針で、さらに増えるのは確実だ。
 行政はセーフティーネットに漏れがないか、再点検するべきだろう。年を重ねるほど復学や就職は困難になるため対策は急務だ。府が昨春設けた脱ひきこもり支援センターは、サイトでの情報発信で相談が増えている。個々の実態に合わせた支援につなげてほしい。

[京都新聞 2018年02月26日掲載]

バックナンバー
 
著作権は京都新聞社に帰属します。
ネットワーク上の著作権について(日本新聞協会)