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新入大学生へ  京都で「問い」を深めて

 きょうから4月。新年度が始まり、京都には、大勢の新入大学生がやって来ます。
 学生のみなさん、ようこそ。勉学はもちろんですが、京都のまちにどっぷり漬かってください。
 京都市には38の大学・短大があり、15万人近くの学生が学んでいます。人口の1割に当たり、全国で最も密度が濃い「学生のまち」です。
 歴史と伝統の京都ですが、毎年入れ替わる学生たちが新しい息吹をもたらしてくれます。この新陳代謝のおかげで、まちが古びないのかもしれません。
 「学生さん」「学生はん」。時には迷惑顔で、たいていは親しみを込め、そう呼ばれます。何はともあれ、このまちになくてはならない存在です。学生のみなさんが面白いことをすると、このまちは面白くなります。
 さて、みなさんは京都で何を学ぶのでしょうか。大学の授業に皆出席でも、受け身の姿勢で、高校までの「生徒」と同じという指摘を聞きます。
 疑問を持ち、自分で調べ、新たな問いが芽生える。すばやく正答する受験勉強とは違った思考が、大学では求められます。
 昨春の入学式で、山極寿一京都大総長はボブ・ディランの「風に吹かれて」の歌詞を引いて、「大学には答えのない問いが満ちています」と新入生に語りかけています。「どんな反発があろうと、とっぴな考えと嘲笑されようと、風に舞う答えを、勇気を出してつかみとらねばならないのです」
 「問い」と「答え」を巡る時間に身をひたす。それが学生の特権ではないでしょうか。
 ところが、1日の読書時間が「ゼロ」という大学生が半数を超えたとのこと。全国大学生協連の調査結果に驚きました。読書習慣が身についていない学生が増えている、と指摘されています。
 一方で社会・政治への関心は思いのほか高く、8割が新聞・ネットで情報を得ていると先の調査にありました。さらに関心を広げ、深めていってほしいものです。本を読まない学生も、問いが芽生え、答えを探すうちに、きっとすばらしい本に巡り合えるでしょう。
 大学のキャンパスだけでなく、まちで多くの人と出会い、友人のできるところが、京都のいいところです。
 約50の大学・短大が加盟する大学コンソーシアム京都では、大学の単位互換制度や学生たちの自主活動などがあり、交友の輪が広がります。アルバイトでも、祇園祭の山鉾巡行の引き手になるなどで、京都の伝統を担う人たちと触れ合えます。
 個性的な本屋やミニシアター、音楽ライブなど学生が通う場所のほか、昔ながらの商店街や銭湯など、まちの人たちと身近になれる所もあります。
 学生時代を京都で過ごした小説家の万城目学さんは「夢を追い続け、『無駄』を重ねる人がたくさんいた」と本紙でふり返っています。
 そうした京都で何が待っているのか。新入学生のみなさん、大いに学び、楽しみ、そして問いを深めてください。

[京都新聞 2018年04月01日掲載]

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