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交番の警官射殺  地域の安全拠点揺らぐ

 警察官が同僚の警察官を射殺する。前代未聞の事件だ。
 住民を不安に陥れ、警察への信頼を大きく損ねた。動機の追及にとどまらず、組織のあり方など背景も含めて解明することでしか、信頼の回復はあるまい。
 彦根市の河瀬駅前交番で、彦根署の男性巡査(19)が先輩で教育係の巡査部長(41)を拳銃で背後から撃ち、拳銃を所持して逃走した。
 滋賀県警は数時間後に巡査の身柄を確保し、捨てられていた拳銃を発見したが、周辺住民には恐怖と不安の一夜だったろう。
 交番は地域の「安全の拠点」だ。警察官は「おまわりさん」と呼ばれて親しまれ、パトロールや巡回連絡などで住民に触れ、頼りにされている。
 そうした交番で起きた事件だけに、県警は深刻に受け止めていることだろう。幹部を含めて地域を回って説明し、住民の声を聞いて信頼の修復に努めてほしい。
 巡査は殺害の容疑を認めているが、動機については県警の調べを待つしかない。関係者への取材では、勤務上の指導について上司と折り合いがついていなかったことが浮かび上がっている。
 警察の組織は階級や先輩後輩の上下関係があり、下の者の不満がたまりやすい。厳しい職務のため激しい叱責(しっせき)や荒っぽい言葉になりがちだ。パワーハラスメントも後を絶たない。
 悩みを相談すれば上司に知られ、評価が下がらないか恐れる空気があるとの指摘を聞く。風通しが良くて、相談の秘密が守られる、実効性のある仕組みが必要だ。
 確かに巡査個人が引き起こした事件だが、まじめと言われた若者が犯行に及んだ経緯を検証し、組織に問題がなかったか考えてみるべきだ。
 もう一つ、衝撃的だったのは警官に貸与される拳銃が使われ、しかもぞんざいに捨てられたことだ。警察庁によると、拳銃で同僚を殺害した事件は過去にない。
 巡査は高校卒業後、警察学校に入り、初任科生として10カ月間、法学など実務授業や訓練を受けたほか、拳銃の扱いとともに貸与の重大性を教えられたはずだ。
 教育のあり方を点検する必要があろう。警察官とはいえ未成年である。拳銃の貸与の適格性や、携帯に対する厳格な条件など、この際検討してはどうだろう。
 警察の言葉では「マイナス事案」だ。しかし、負の面を洗い出し共有することが、信頼回復や再発防止につながるのではないか。

[京都新聞 2018年04月14日掲載]

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