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海賊版サイト  接続遮断に懸念拭えず

 インターネット上で漫画や雑誌などを無料で読める「海賊版サイト」に対し、政府は著作権侵害を防ぐ緊急対策に乗り出した。
 海賊版の横行は看過できない。主な違法サイトだけでも著作権侵害の被害額は4千億円を超すとの推計もある。漫画家らの正当な利益が損なわれればコンテンツ産業の将来に悪影響を与えかねない。
 とはいえサイトへの接続遮断は通信の秘密や表現の自由を脅かす恐れがある。「もろ刃の剣」である緊急対策が法的根拠の議論や適正な手続きを欠いたまま政府主導で進むことに懸念を拭えない。
 政府の知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議は先週、特に悪質な三つの海賊版サイトを明示。民間プロバイダーの自主的な対応として接続遮断を促すことを決めた。
 3サイトは著作権者に無断で漫画やテレビ番組などを公開し、1200万~1億6千万人の月間アクセス数を集めていた。緊急対策を受け、既に接続不能になったり動画再生を停止したりしている。
 接続を遮断するには利用者の通信を監視する必要がある。政府も形式的には検閲につながり憲法に抵触すると認めている。それでも削除要請などに応じない悪質サイトに対しては、刑法の「緊急避難」が容認されると判断した。
 接続遮断の実施は、児童ポルノに限った特例措置として警察庁や総務省などが慎重に検討した末に始まった。ところが今回、政府の恣意(しい)的な判断で対象が際限なく広がる危険性を露呈した。法的根拠を明確にし、ルールを整えるのが先決ではないか。
 緊急対策の背景には、漫画やアニメといったコンテンツの海外展開を成長戦略の一つに位置付ける安倍晋三政権の方針がある。経済優先で拙速に対策を打ち出したとすれば、将来に禍根を残そう。
 政府は法制度の整備を検討し、来年の通常国会で関連法の成立を目指す予定という。著作権者と利用者の意見を十分に踏まえ議論を尽くし、双方が納得できる制度にする必要がある。併せて海賊版サイトをリンク先としてまとめて利用者を誘導する「リーチサイト」の規制や、サイト運営を支える広告収入を断つ手段も工夫したい。
 違法な海賊版サイトが後を絶たないのは、人気漫画などを無料で読みたい利用者がいるからだ。気軽に読めるため、著作権を侵害しているとの認識は希薄だが、安易な利用が作家の努力や才能を踏みにじり、さらには出版文化の疲弊を招くことを肝に銘じたい。

[京都新聞 2018年04月20日掲載]

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